『明治天皇が五人の側室を持ったのは好色のせいではない。次代の天皇たる皇子が皇后に生まれなかったからである。大正天皇と貞明皇后は四人の皇子に恵まれたが、天皇は病弱で国権の総攬者としての役割を果たせず、皇后の苦心はひと通りではなかった。昭和天皇は心身ともに健康だったが、皇子がなかなか誕生せず、側室を置こうとする動きさえ現れた。天皇は男系の男子皇族でなければならないという掟から生ずる数々の難問。そして、いま女帝論が…』 明治から平成まで、近代日本の四代の天皇。西洋社会との関わりの中で、一夫多妻制から一夫一婦制へと代わり、太平洋戦争敗戦後には多くの皇族の皇籍離脱が行われた。それらが現在の“お世継ぎ問題”を生む要因となっている。 もちろんこの本の中心は天皇家の後継ぎについてだが、宮中での政治的な動きや大正天皇の健康問題などがかなりはっきり書かれていて、面白かった。 (文春新書、700円+税)