『伝説の特捜検事・田中森一は闇世界の弁護人へと転向。現在は石橋産業手形詐欺事件の刑事被告人であり、最高裁の判決を待つ身である。一方、ヤクザの息子として生まれ育った宮崎学は、革命を目指し学生運動に邁進。その後、グリコ森永事件の真犯人と疑われる。本書は、同時代に「極限」を体験した者同士の、奇跡の対談である』
結局は「カネ」なのか、それとも「情」なのか。裏社会と繋がりを持ち「塀」の上を疾走した2人。「闇社会の守護神」と「キツネ目の男」。バブルという時代。能力のある人間が仕事をする時、考えられないようなカネが動く。もちろん、今も金儲けのうまい人はいる。だが、堀江貴文、村上世彰両氏らの名前を挙げながら、彼らとは違うと言う。世間から見れば恐ろしい犯罪者たちの、世間からは見えない人間味あふれる姿。そういうものに2人は惹かれたのか。
関係した人間は政治家からヤクザまで大物ばかり。多くの事件について言及されているが、この2人はどこまで知っているのだろう。宮崎さんは作家として精力的に活動しているし、田中さんも刑期明けには何らかの活動を再開するのではないか。もう少し時間が経ってから、バブル時代の証言者として登場した時にはもっと踏み込んだ話を聞かせてほしい。
(扶桑社、1400円+税)
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