『バブル崩壊後の不況、日米関係の蜜月と裏腹の中韓との不和…。どこかしら今の時代とつながるあの「八〇年代」が、著者の“カルチャー”体験を交えて、軽快に描き出される。』 筆者は、朝まで生テレビなどに最近よく出ている同志社大教授。「猥雑」な80年代を新書300ページに渡って書いている。結構なボリュームだが10年間の出来事を網羅するには十分ではないのだろう。駆け足にならざるを得ない。 筆者流の言葉で言えば、「無知な私が始めて知る」人物が多数登場するが、多くは2、3行の記述しかない。もっと詳しく書いて欲しいと思う一方で、社会を揺るがした事件やアイドルなどについては「そんなの知ってる」という感じも。やはりこれだけの期間をまとめるのは大変だ。 文章が少し“浮かれている”ような気もするが、筆者が楽しんで書いているからでしょう。もう一度ゆっくり読み直せばまた違った印象を持てるかもしれない。 (文春新書、890円+税)