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平和の視点
       
いつか来た道
     
 朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)への関心が,かつてないほどになっています。しかし,プラスイメージでの関心であればいいのですが,ブッシュ米大統領の「悪の枢軸」発言にあるように,マイナスイメージとしてしかとらえられていません。確かに,まるで神様であるかのような扱いの故金日成及びその継承者である息子の金正日を中心とした世襲制の独裁政治,日本人拉致問題,核開発等々,朝鮮半島や日本はもちろん,世界の平和や人権を脅かす問題点をたくさん抱えています。
 しかし,60年ほど前までこうした国がアジアに存在していなかったでしょうか?その国は,アジアはもちろん,世界の国々の平和や人権を脅かしてなかったでしょうか?その国とは,皆さんおわかりのように我が国「日本」です。天皇を代々「神」とあがめ,妄信的な国づくりをすすめていきました。大勢の中国・朝鮮人を強制的に日本に連行し,劣悪な環境の中,炭鉱などの危険な場所で強制労働させていきました。さらに,民族の誇りである名前や言葉までも日本人のように変えさせること(創氏改名)までしています。これらのことは,現在北朝鮮が行っていることと大差ありません。

 しかし,そうした過去のことはすっかり忘れ去り,現在の北朝鮮を非難することだけに留まってはいないでしょうか。もちろん,「今の金正日体制を支持せよ」とか,「過去に過ちを犯したのだから黙っておかないと」と言うつもりは全くありません。むしろその逆です。大きな過ちを犯した経験があるからこそ,その経験を二度と他国が犯さないような取り組みをしなければならないと思います。
 ところが,私たちの意識の中で,「北朝鮮=悪」「北朝鮮人=悪」というような意識が存在していないでしょうか?実際,日本人拉致問題が再びクローズアップされ始めたころから,国内において朝鮮人の方々に対する差別事象が頻繁に起こりました。政治体制とその下で生活している人間は別のものです。「金正日体制=北朝鮮国民」ではないのです。もしその図式を当てはめるのでしたら,「50数年前の日本の体制=日本国民」ということになります。50数年前日本国民が本当に望んで侵略戦争を行ったわけではないはずです。「そう思い込まされて」とか,「無理やりに」とかいう形であの悲惨な戦争へと駆り出されたのではないでしょうか。過去に大きな過ちを犯した経験のある国だからこそ,危険な政治体制に対する批判と,その下で生活している人間に対する思いやりを忘れてはいけないのではないでしょうか。
         
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