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2006年3月28日(火)
阿片王 満州の夜と霧(佐野眞一)

『満州には「戦後」の核心が眠っている―。策略渦巻く満州帝国で、最も危険な阿片密売を平然と仕切って巨額の資金を生み出した里見甫。その謎に満ちた生涯を克明に掘り起こし、麻薬と金に群がった軍人、政治家、女たちの欲望劇を活写する』

満州国は関東軍による人造国家。その関東軍の資金の出所は阿片の密売だった。筆者は対中戦争を「20世紀のアヘン戦争」とし、軍に依頼され阿片を一手に扱った「里見甫」を描く。

その人脈がすごい。大物軍人、政治家から無名の満州ゴロまで。昭和の時代を動かした人々のルーツが満州にあったことが分かる。彼らは満州で得た人脈や資産、物資を基に戦後、表舞台で活躍する。対して里見は民間人として初めてA級戦犯として逮捕された後は、一貫して沈黙を守った。阿片密売で多くの中国人を中毒患者にした負い目があったのか。

後半部分は里見の側にいた女性たちについて書かれている。波乱の人生。里見の最初の妻は大分の生まれという。里見との出会いは彼女たちにどんな影響を与えたのだろう。

筆者はあとがきで戦後の高度経済成長の秘密を解く鍵が満州にあり、歴史の闇に消え去る前に語り継がねばならないとしている。この本で完全に目的が達成できた訳ではないだろうが、ひとつの手掛かりになるだろう。
(新潮社、1800円+税)




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