『沖縄戦から六十年。戦後日本の「平和」は、戦争では「本土」の「捨て石」に、その後は米軍基地の「要石」にされた沖縄の犠牲があってのもの。この沖縄差別の現実を変えない限り、沖縄の「戦後」は永遠に「ゼロ」のままだ。著者は、家族らの戦争体験をたどり、米軍による占領の歴史を見つめ直す。軍隊は住民を守らない。節目の六十年の日本人に、おびただしい犠牲者の血が証し立てた「真実」を突きつける』
筆者は沖縄出身の芥川賞作家・目取真さん。沖縄戦が終わって60年。“殺される側の視点”から戦争と戦後を見詰める。沖縄で日本軍は何をしたのか。米軍による無差別攻撃はなかったのか。その後の占領はどう行われたのか。戦争体験者から直接証言を集めることの重要性を指摘する。
ベトナム、アフガニスタン、イラクへと続く米国の戦争に、沖縄を重ね合わせる。目取真さんの母親はアフガニスタンの街や山岳部が爆撃されているテレビの映像を見て、沖縄戦のことを思い出す、と言い、爆撃で殺されていく人たちのことを悲しむという。米軍の発想は60年経っても変わっていないのではないのか。沖縄戦の経験を通して、現代の戦争をどう捉えていくかが問われている。
(生活人新書、640円+税)
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