『あの苛烈な戦争の実相 この40年の人々の表情―ベトナムから帰国後も、2005年の戦争終結30周年記念式典まで、何度となくベトナムへ通った。戦争と終戦後の変化を見続けて、戦争がどのようなものであるかその実体を知ることができた。……平凡な表現だが、戦争の取材を通して、人間の生命がいかに大切であるかを身にしみて感じた。その大切な生命を一度に多く奪ってしまう戦争がおこらないようにみんなで努力したいと思う』
石川さんは報道カメラマンとしての第一歩をベトナムで踏み出した。厳しい現場なのは想像に余りある。だからこそベトナムへの思いは深いのだろう。40年にわたる記録。新書なので写真の枚数はそれほど多いわけではないが、従軍カメラマンでなければ撮影することができない場面が収められている。
傷ついた兵士・市民、破壊された村、枯葉剤の後遺症に苦しむ子供、難民、そして戦後の平和を生きる人々。『自由と独立ほど尊いものはない』。自由と独立を得るために、近代兵器を持つ大国と戦い続けた。その代償は甚大なものだったのだろう。
『正義が勝った。しかし、勝利のためにもっとも心優しく、勇敢で、品性にすぐれた価値のある人々が、拷問され、殺害され、精神を破壊された。戦争が人々の心に刻んだ傷跡はいつまでも残るだろう』。アメリカはベトナムでの過ちを再びイラクで犯そうとしているのか。日本はそれを無条件で「支持」しているが…。
(岩波新書、1000円+税)
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