『朝鮮半島もわが「祖国」であり、日本もまたわが「祖国」であると。失郷者を気取るよりも、あえて嘘でもいいから、そう呼び、自らをそこに一体化させることで逆に国家や民族を突き抜ける回路がないのか、それを探り当ててみよう』
戦後60年。姜さんのふたつの「祖国」はどんな道のりを辿ってきたのか。“解放”されたはずの半島はふたつの国に分断され、朝鮮戦争によって多くの犠牲を生んだ。対して日本は大戦の痛ましい敗北から急激な発展を遂げた。共産圏から日本を守る役割を、韓国は米国に負わされたのだ。
日本はかつての宗主国でありながら、朝鮮半島について、関係を築く努力をどれほどしてきたのだろう。北朝鮮核問題の緊迫化、韓国との間で歴史問題がこじれる今、解決への方策を考える手助けにこの本を読んでみるのもいいのではないだろうか。勇ましい言葉ばかり並べる政治家は信用できないし。
(講談社+α新書、税別800円)
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