イラクで武装勢力に拉致された高遠菜穂子さんの講演が大分市で開かれた。日本では日本人が人質となったことに大きな衝撃を持って受け止められた。同時に「自己責任論」が強調され、彼女たちの行動は危険を顧みない無責任な行動だとされた。
今回の講演ではそのことについては最初に一言、高遠さんからお詫びがあっただけ。大半はファルージャについての報告だった。彼女にとっても大変なことだし、思い出したくないこともあるだろう。しかし講演を聴くうちに彼女はもう次の目的に動き出しているのだと感じた。自分が今できるイラク支援に向かって。
ファルージャはザルカウィの拠点として、米軍の掃討作戦を受けた都市。日本ではそう報道されていた。しかし、日本での報道は米国からもたらされる情報に頼っているので偏ったものにならざるを得ない。
米兵とイラク人とは互いにコミュニケーションが取れない。デモに向かって米兵が発砲したのをきっかけに、ファルージャでは住民による抵抗運動(レジスタンス)が始まる。それに対して米軍も空爆や民家の家宅捜索などを強化していった。ザルカウィ派の外国人勢力はもちろんいるのだろうが(イラクではザルカウィは3年前に死んだとの認識だそうだが)、一般市民に大きな犠牲が出ている。市内には数千もの遺体が放置されたままになっている。
一方で外国メディアは現地に入ることができない。“報道の壁”が出来ていると高遠さんは話す。今回、一般のイラク人が撮ったビデオを見ることができた。日本でも大きく報道された「結婚式への誤爆」。その後の遺体を埋葬するシーンが映っていた。頭のない子供など損傷の激しい遺体を確認する遺族。一般のテレビでは見ることのできない悲惨なシーンだった。
最後に高遠さんは「偏った情報でなく、イラク側からの情報を見た上で、自分に何が出来るのかを考えて欲しい」と話し講演を終えた。
会場では高遠さんや安田純平さんらが撮った写真も並べられていた。劣化ウラン弾の影響だろうか、頭の一部が膨れ上がった子供など、現在のイラクの状況が写されていた。
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