第6章  着工しちゃった

<1997年3月>
 「地鎮祭をしますか」といわれて、私たちは言葉に詰まった。う〜ん、基本的には無神論者だし、でも母親はこういうのにうるさいし、やっぱりしといたほうがいいのかな。
 よく大きな工事などの地鎮祭で、くわ入れをお偉方がしているのがニュースなどで流れますが、そういうものだとしか想像できませんでした。結局、互いの親に相談し、「やったほうがよかろう、いやぜひやりなさい」などという流れでやることになってしまいました。手配はすべてミサワホームがやってくれ、私たちは御神酒とお礼を準備するだけでした。
 さて当日です。四方をロープで張り巡らし、中央にテントがしつらえてあります。そこで祭壇にお酒や野菜や穀物、水、塩などが並べられます。神主さんのお祓いのあと玉串を捧げるというかんたんな儀式でした。地鎮祭、上棟式(棟上げ)等は家を建てる際にするかしないかで、よく雑誌のテーマになっています。メーカーは気持ちの問題だから、基本的にはしなくてもよいが、するんならお世話しますというスタンスをとっているようです。

<1997年4月>
 お金の問題に少し触れます。うちの場合、二人とも教員ということで、メーカーさんの反応はとてもよく、自己資金なしでも大丈夫というようなノリでした。自己資金と両方の親からの出資で実はけっこうな額(といっても私たちの尺度でですが)あったので、自己資金については心配ありませんでしたが、そう言われるとちょっとひと安心といった心持ちになります。教員でよかったとはじめて思った瞬間でした。まあ、いつもは損してばかりだからたまにはいいかな。
 借り入れについては、住宅金融公庫で融資を受けるわけですが、融資がおりるのは完成してからあとのことです。つまり、ミサワホームには融資がおりるまえにお金をはらわなくてはなりません。当然、借りなくてはならないわけですが、これはミサワホームに融資をしてもらいます。そして、住宅金融公庫から融資がおりた時点で、ミサワに横流しというわけです。でも、単純に横に流れるわけではありません。というのは、ミサワに借りてから、公庫の融資がおりるまでの間に利息が発生するわけです。かなりの金額ですから、利息もばかにしたもんじゃありません。当たり前のこととはいえ、なんだか理不尽な気もします。大工さんなら、融資がおりるまで待ってくれるのでしょうか。
 地鎮祭です。神主さんは大分のひとで、ミサワがいつもお世話になる人のようでした。思った通りの形で地鎮祭が行われ、まあこれだという気持ちを新たにしたのでした。
 そしてついに基礎が打たれました。この団地は前年の秋に完成しています。地盤の調査も報告書ももらっていますが、一部弱いところもあり(といっても当然基準はクリアした値ですが)すべてベタ基礎で行うということでした。基礎を見た段階では、なんだか狭いなあ。これが家になるんかな、という素人然とした感想しかもてませんでした。
 地盤の報告書ですが、そういう調査会社に依頼して作られた立派な報告書で、自分の土地の地盤の様子を把握できるという点では、さすがメーカー住宅とうならせるものがあります。
<1997年5月>
 基礎もでき、いよいよ建てられるという状態になりました。そしてついに「組み立て」の日が決まりました。ふつうにいうところの棟上げになるのでしょうか。ミサワの木質パネル工法というのは、「面」で組み立てていく工法です。中に断熱材や配管パイプを通したパネル(長方形の板箱に断熱材が入っていると考えていいでしょう)を何種類も組み合わせて、大きな箱をつくります。その大きな箱に床板や屋根をつけて「家」の形になるです。5月2日が工事の日となりました。あいにく仕事でこの日は都合がつきませんでした。
 夕方、仕事を早めに切り上げて、薄暗くなったころ現地に着きました。すると、昨日まで基礎しかなかった見通しのよい土地に、大きな箱ができていました。写真でも分かると思いますが、「箱」なのです。ふつうだいだい1日で組み上がるものですが、うちは結構床面積が大きく、1日では屋根までたどりつきませんでした。雨など降らぬよう祈りつつ、ぽっかりと天井のあいた「我が家」を後にしたのです。
 さて、ミサワ木質パネルの工事ですが、今うちの斜め前の家が工事をするときに、たまたまそのその様子を見ることができました。朝、何台もの大型トラックが次々とやってきます。パネルをクレーンでつりあげます。もちろんこの時点で足場はきちんと組まれています。そして、まず基礎の上に床パネルを敷き詰めていきます。次に壁パネルを次々とたてていきます。最後に屋根を組んで家の形ができあがります。自由空間の場合、正方形の真ん中に耐力壁があり、あとは柱1本もない巨大スペースができます。窓のサッシなどは、工場でパネルに組み込まれているので現場での工事はひたすら組み立てるだけです。
 中をどうチェックすればいいのか。素人目に見て、うーんこの工事はなどととてもわかりません。左の写真のようなハリケーンタイはきちんと止められているかとか、そんなのチェックしてる雑誌もあって、「おお、あれがそうか、チェックせねば。」などとこそっと盗み見したりしました。大工さんにはお茶の準備などいっさいいらないということなので、そういう準備にあたふたすることはありませんでした。ときどきジュースやアイスクリームの差し入れをした程度でした。自分が小学生の頃、実家の新築をしましたが、そのときは、10時・3時のお茶菓子からいろいろと接待が大変なようでした。それに比べれば何と楽ちん、メーカー住宅。
 ミサワの事務所には大きなミッフィーちゃんがいます。長女の夏帆はよくここへミッフィーちゃんを訪ねて行ってました。
中の工事でびっくりしたのは、分かってはいたことですが、柱が1本もないということ。全部が面であり、壁までがパネルであるということです。
屋根も無事ついて、外観は形ができました。次はパネルの上に防蟻シートなどをはって、外壁を打ち付けるための受けの木を等間隔に打っていきます。左の写真の状態がそうです。そしていよいよ外壁です。ミサワワインと名付けられた赤茶の外壁が打ち付けられていきます。下の写真で右下に立てかけられているのが外壁1枚分です。こうなるとかなり家らしくなってきました。
 このころは仕事が終わって、猛スピードで現地に向かい、工事の進み具合を確かめるのが楽しみでした。でも、明るいうちに行けることはほとんどなく、真っ暗な中をどろぼうのようにこっそりと見に行く日々でした。
 
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