第2章 メーカー選びは難しい

<1996年10月>
 さて、住宅メーカーというとそれまでほとんど知識の
なかった私にとっては、それはそれは未知の世界でした。「積水」というのが「セキスイ」のことで、でもそれには「ハウス」だとか「ハイム」だとかあって、またまたよく分からないが「ツーユー」なんてのもあるらしいなどと、少しずつ勉強していきました。
 いつものパターンでまずカタログ集めです。住宅展示場でもらう高価そうなカタログがどんどん集まってきました。そして、メーカーの評価について大活躍したのが、先に紹介した、佐藤紀章氏の「メーカー住宅選び得本」でした。2800円もする、、、と涙をのんで買いました。これによれば、全国規模の名の通った大メーカーならほぼ、工事管理や品質については問題はないということがわかりました。また、フランチャイズチェーンの中でも、名前はチェーン名でも実質、地元の工務店が管理、施工している場合は、当たり外れがあり、時には手抜き工事が発見されるということでした。また、現場で材料をカットするのでなく、あらかじめ工場で部品をカットしたり、ある程度組み立てたものを運んできたりという、いわゆるプレカットの場合、品質が保証でき、部材ごとのばらつきもなく、工期も短くてすみます。この本は本当にいろいろと勉強になりました。えらい本です。
 じゃあ、いったいどうやってメーカーを選んだらいいんだ。悩みます。その前に知っておかなければならないことがあります。いま、私たちが建てようとしているのは、いわゆる「企画型住宅」です。つまりゼロから設計をし、部材を選びというものではありません。決まったユニット、決まった部材で作る家です。だから工場で大量生産でき、コストもやすくつくのです。一般にTVや雑誌でCMしているものは全部企画型住宅です。たとえばセントレージとかデシオとかサラとか名前が付いているのがそうなのです。基本の設計パターンがあって(多いものは何十通りもあります)それをもとに細かい設計をしていくのです。
 とにかく、メーカーを決めなければ話は進まない。さあ決めるぞ。そうです、雑誌やカタログの検討、そしてモデルハウスです。モデルハウスについてはちょっと気をつけなければなりません。分かり切ったことですが、モデルハウスと実際に建つ家は違うと言うことです。モデルハウスは超実験的な間取りと考えます。ドラマに出てくるような夢のような家ですが、実際に建てることを考えると何とムダの多いこと。こんな踊り場があったらもう一部屋できるぞ、こんなオープンスペースいいな、でも冷暖房はどうするんだ、寝室のカウンターバーかっこいい、でもねえ、、、。
 やはり実際にこれから住むぞっ、という家を見なければなりません。TOSの展示場や、ALPで夢見心地になった私たちは、「だまされてはいけん!!」と固く誓い、モデルハウスまわりから、現地見学会へと方針を変えたのでした。週末ごとに新聞広告に入ってくる現地見学会に、これはこれはと引き寄せられていったのです。
 一番多く行ったのが、ウインヒルけやき台、大分の郊外にある大団地です。有名メーカーのほとんどの住宅を見ることができました。杵築のセキスイやダイワ、別府や山香などけっこう見て回りました。やっぱりモデルハウスとは違う、「暮らし」が、そこには感じられました。
 まず一番の違いは、玄関が狭いということです。次に、階段の幅が狭いと言うことです。次にトイレやバスが狭いということです。つまりすべてにおいて狭い(本当はこっちがスタンダードなのですが)ということです。ああ、実際に建つのはこんなもんなんだな、、夢を見ていただけにちょっとショックでした。
 現地見学会の中で一番びっくりしたのは、ミサワセラミックのユニット工事でした。ミサワホームには、木質パネル工法とセッラミックユニット工法があります。前出のウインヒルでたまたま見ることができたのですが、これは面白かったです。
 大きなトラック(トレーラー?)が何台もやってきます。荷台には大きな大きな箱がのっています。これが鉄骨の枠組みにセラミックの外壁のついたユニットです。窓や、配線や、断熱材など工場で仕込まれた、まさに「部屋」の状態がトラックでやってきます。そして次々とクレーンで宙づりにされ基礎の上に並べられ、積み上げられていくのです。積み木そのものです。1日もたたないうちに何もない土地に家が出現するのです。ああ、驚いた。
 さて、いろいろなメーカーをまわるうちに、それぞれのメーカーに対するイメージが固まってきました。そして少しずつ、メーカーも絞れてくるようになりました。当時の各メーカーに対する印象です。まったく意中になかったメーカーは省きました。
 
積水ハウス 大本命、であったのですが、高すぎる。予算の検討までもいかず。夢としてあきらめる。セントレージといえばBMWも同義である。いいなあ。
セキスイハイム 見学会に回り始めた頃の第一本命、「ドマーニ」「セラーノ」外観はたいして気に入らなかったがユニットの設計の自由さが気に入った。「ワルツ」が後に発売されたが当時これが出ていたら今頃は「ワルツ」住まいだったかも。
ダイワハウス 県北にはなぜか異常にダイワ派が多い。当然、ダイワハウスも多く建っている。見飽きてしまった。いいメーカーなんだろうが、外観にどうしても興味がもてなかった。
三井ホーム 他の輸入住宅系も同じだが、個人的には大好き。でもうちの奥さんは猛烈に反対する。当然のごとく候補からは早々と姿を消してしまった。
ミサワホーム はじめはあまり印象になかった。商品名もよく知らない。ただ名の通ったメーカーというくらい。
エスバイエル 何となく自分にも買えそう。親しみのわくメーカー。長いこと第一本命で交渉をした。
パナホーム ナショナルだけあって、電化住宅というのが気を引いた。でもそれだけだった。
東日本ハウス けっこう気になったが大分での代理店も知らず、交渉はまったくなし。

 他にもいろいろとメーカーについては調べたのですが、第1次家族会議の結果、はずされる運命となりました。

<1996年11月>
 10月から11月にかけては、メーカー絞りの大混乱、大混戦の日々となりました。現地見学会に出かけていくのも絞られたメーカーだけとなり、それなりに具体的なイメージを描いての見学をするようになりました。
 そこで、最初に浮上したのが、「セキスイハイム」です。鉄骨ユニットにひかれてカタログを徹底研究しました。しかし、現物を見るたびに、外観デザインに魅力なさが気にかかり、実際に交渉するところまでいかず、カタログどまりとなりました。後に「ワルツ」が発売されますが、この安さと外観は十分に魅力的でした。もし、この時期に発売されていれば、迷うことなく交渉に入っていたと思います。
 最初に交渉に入ったのは「エスバイエル」です。担当さんが、若くてやさしいおにいさんという感じで、とても親切に、こまめに、丁寧に対応してくれました。木質ユニットというのでしょうか。簡単に言えば、気のパネルを組むことで、ユニットをつくると言う工法です。柱はなく、壁つまり面で構成された家で、耐震性に優れるというのが売りです。ただ設計に自由度が少なく、外観は総二階の箱形となります。もちろん部屋を付け加えたり、ベランダをつけくわえたりして、さまざまなバリエーションがあります。外壁もさまざまなサイディングがあり、レンガ調のシックなものまであります。
 土地が決まってなかったので、早急に設計を等という話にはならず、まあゆっくり勉強しながら話を進めようというかんじで、次々にエスバイエルの家を見て回りました。担当の人も同じ歩調で、契約を急ぐようなこともありませんでした。しかし、家を見て回るうちにだんだんと印象が変わっていきました。うちの奥さんはとくにそうあったようです。
 それは、外装も内装もですが、質感がいまいちだなということです。この価格ならまあこんなものという割り切りはもちろんあるのですが、ずっと暮らしていく家だからという気持ちの方が大きかったのです。システムキッチンなんかもカタログで見る印象と実物を見る印象はだいぶ違います。
そして、そんな気持ちのまま、ある日ミサワホームの展示場を訪ねました。展示場の家は古いモデルで外観もありきたりの家でした。そこで、いかにもベテランというかんじのおじさんに声をかけられたのです。その時の話はよく覚えていませんがキャンペーンで、九州で何棟か安い価格で家を建てられるというものです。PHSまでタダでくれるよ、という話でした。
 展示場譲りますなどどこのメーカーでもよくやっているキャンペーンですが、ミサワホームはこれが本当に多い。最近は住宅資金1000万が当たるなどととんでもないことをやっていました。割引やおまけをつけるというのも結構多かったように思います。ある住宅評論本では、ミサワホームの欠点はこのキャンペーンや割引の多さだと言っていましたが、本当に圧倒的に多かったのです。
 そこで、ミサワホームの家もちょっと見てみようという気になりました。何度かウインヒルなどでみていたのですが、あまり印象はありませんでした。まあ、どんなのあるのかなという程度だったのです。でも、ここからどんどん話はミサワホームに傾いて行ったのです。不思議なものです。 
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