痛い歯を抱え思案を重ね、何日も悩んだあげく、歯科医院に飛び
こんできます。
なぜでしょうか？一人の例外もなく、痛い、腫れた、血が出ると
訴えます。
歯の正しい手入れ方法を教えて下さいと尋ねてくる人は一人も経
験したことはありません。
日本に歯科医院が出来て百年近い年月を重ねています。この間歯
科医療に対する不快な経験が両親から、隣人の話から語り伝えら
れ、心に深く焼き付けられているのです。ピカピカ光る治療器具、
不気味な音をたてるエンジン、弁慶の七つ道具を背負ったような
機械が、治療椅子の横に立っています。二台も三台も横に並んで
います。大きな口を開けて、安心しなさいとなだめられても、体
のふるえと心の不安は増すばかりです。
口の中に金や銀がきらきら光る時代は終わりました。
昔物語になりつつあります。
歯の根さえあれば、天然歯とまったく同じ歯ができます。
にこやかな顔にきれいな白い歯は、美容上の必要条件で健康的な
感じをあたえます。歯科診療は美しい歯並びと自然美が要求されます。
義歯とは見えない美しさが必要です。
日本人も沢山外国に旅行します。
日本人の口元に光る、金歯銀歯、虫食い歯を眺めて、
外国人は非常に不快感を覚えるのです。
口にこそ出しませんが、私達が入墨をした肌を眺めると不快に感
ずるのと同じだそうです。外国へ旅立つときはエチケットとして、
金歯銀歯虫くい歯を取り除いて頂きたいものです。
今まで述べたことを一応頭に入れて、次に歯科治療の手順が、
昔とどのように変わっているか､一つの標準となる手順を紹介します。
静かに考えることのできる状態で治療の相談に行ってください。
自分の考え､希望のすべてを､どうしてもらいたいか十分に述べ
てください。あなたの考えが基本になります。
家を新築する場合と全く同じ事と思ってください。家の設計､基
礎工事はどうするか、使用材料の選択､工期と工期手順の打ち合
わせ､費用の話し合いがまず最初に行われます。
歯科医の仕事の内容を今一度まとめてみます。
｢上下の噛み合わせを作る。よく噛めること｡会話に不自由しないこと。
健康的な美しい歯並び。永く使用に耐える義歯。残っている歯に
無理がないこと。｣
このような目的を自分の口の中に計画してもらいます。
計画の基礎資料として精密検査に協力してください。X線写真と
石膏模型､精密検査の結果を資料として治療計画を作ってもらう
のです。
歯の抜けている所に義歯を作ると単純に考えないで下さい。義歯
を作っても残っている歯が二年三年で抜けるようではいけません。
残っている歯が永く使えるためにはどんな義歯にするか。よく噛
めるようにし、気持ちよい義歯にする為には、義歯の設計と材料
の選択が大きいウエイトをしめてきます。
目標は１０年ぐらい先を予測して設計します。破折などの折に修
理可能かどうか。費用の総計、支払い方法。一回でも二回でも納
得のゆくまで話し合いが必要です。
何本虫歯があるから治療時間の総計の時間を一回の治療時間で分
割すれば、何回通院すればよいか、予定ができます。次に一週間
に一度が二度通院することで、完成予定日も予測できます。
毎日通院する必要はありません。週に一度、月に一回づつでも、
計画案に従って進行します。
治療計画を立案する前に歯科治療にも基礎工事治療が必要です。
近代歯科医学には建築基礎工事にひってきする口腔環境衛生の確
立、即ち口腔内の歯と歯茎の環境を清潔に保つ必要があります。
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