1.プロローグ

本書は、別府八湯温泉道表泉家の湯遍路日記、そして、初代名人としての独占手記からなる。湯遍路日記は、別府八湯温泉道表泉家88ヶ所めぐりの2順目の記録である。「触れ合い・交流」をテーマとして、つれづれなるままに(どこかで聞いたフレーズ)書き記したものである。内容的には、各温泉施設を中心とした出会い、触れ合い、交流などをキーワードとしたが、基礎データとして、湯遍路が最も知りたいと思われる駐車場やアメニティ情報を取り上げることにした。

 湯遍路関係の詳細については、「別府市旅館組合連合会監修(2001):『別府八湯温泉本(別府八湯表泉家BEPPUHATTOSPAPORT)』;おおいたインフォメーションハウス梶A64頁」を参照されたい。

 別府の共同湯や市営温泉に初めて入ると、普通の人は、まず驚く。あがり湯や石鹸がないことである。それに時には洗面器(風呂桶)がないことも…。慣れてしまえば、大したことではないが、今風の公衆浴場と勘違いをしてしまうからである。別府の場合、共同湯は、原則として、地元民を対象とした温泉施設であり、洗面器や石鹸などは、各自、家庭から持参する仕組みである。この仕組みが分からないと、利用者からみれば、「何だ、この温泉は…」となる。 しかし、100円や300円程度の入浴料金で、石鹸を求めることは、施設側に対して酷な話である。まず、この辺の所を理解しないと、湯遍路修行は、困難なものとなろう。ただし、市営温泉や共同湯の一部では、タオルや石鹸は有料で販売している所もあり、そこで購入が可能である。

 なお、ここで言うアメニティとは、浴室に備えてある石鹸、シャンプー、リンスの3点セットを表す。その他に、髭剃りや綿棒などのアメニティが設置されている場合は、その箇所で記載した。

 湯遍路日記は、あくまでも触れ合いと交流をテーマとしており、泉質・効能については、あまり触れていない。泉質・効能については、その道の名人や達人が沢山おられるので、その方々にお任せしたい。「湯遍路日記」は、書き下ろしで、「初代名人としての独占手記」は、全文を「今日新聞」(2001年4月7日付)に掲載して頂いた。手記を書いたのは、2001年4月1日の未明である。3月31日の温泉まつりにおいて、初代名人として表彰を受けたその夜のことである。感激の一部が報告できれば良かったが、友人からは、文章は肩肘が張っていたと指摘された。取材担当である小野弘記者に対し、ここに記して謝意を表したい。温泉まつりと入湯中の写真は、今日新聞(小野記者の撮影)の提供である。温泉殿堂の展示写真は、吉永カメラの吉永秀生さんの作品である。また、潟Nリエイツの森宗明社長には、編集などの労をお願いした。その他、色々な方からお世話を頂いた。重ねてお礼を述べたいと思う。別府八湯の益々の発展を祈念して…。

 2001年7月1日、恩師・服部_二郎先生の傘寿の記念日(7月3日)を前にして…。別府市田の湯において。

浦 達雄。