蘇った特攻野郎[2001]

19歳の時の話しなので、思いっきり若気の至りだと今は笑えるのですが。

あれは大学1年の夏、蝉の声がうるさいAM9時頃の出来事であったバス・電車通学が大嫌いな私はその当時、某国立大学にバイクで通っていた。

愛車CBRのエンジンはチェーンで駆動されており、独特の音を奏でながらまだ渋滞している区間で車を尻目に順調に走行していた。そしてこれから加速していこうとする区間にさしかかったときにその事件は起きた。


そこは片側3車線の交差点で、ファミレス(これ重要)と消防署(これも)がある交差点であった。この地方では早朝と夕方の時間帯は片側1車線がバスとタクシーの専用線となり、他には2輪車だけが通行可能な制度がある。この制度も一長一短で、バス等は快適に通行できる反面、残りの2車線は大渋滞となりやすい。


私はいつもの決まりごとの様に、バスレーンを進行しており、交差点に進入しようとしていた。対向車線では、右方向に曲がろうと中央で停まっている白色のローレルが待機しており、車内ではカップルらしき2人が楽しそうに会話している様子が窺えた。現段階では何も問題は無い。そこで私は愛車に鞭打って加速を始めた。その刹那こちら側の車がパッシングをしたらしく、待機中のローレルはバスレーンを全く確認することなく曲がって来た。(この時点で私の過失0がほぼ確定)


ブレーキが間に合わないと一瞬考えた私は、咄嗟に後輪をロックさせてバイクを横滑りさせてはみたが、時すでに遅く、バイクはものの見事にローレルの後部に突き刺さり、私は50m程飛ばされてしまった。自分の中ではすぐに起き上がったつもりだったのだが、どうやら2~3分程度は気絶していたらしい。気付くと隣りにはローレルのカップルがオロオロとした態度で立ちすくんでいた。


後で知ったのだが、この男性、前日免許取立てのスーパー若葉さんだったのだ。免許が取れたのが相当嬉しかったらしく、彼女と徹夜のドライブをして少しばかり得意になっていたらしい。しかしながら経歴の浅い彼は頭の中が真っ白で事故の対処をすることもできず、通報をする余裕が無かったらしい。彼にとって最も不運なのは目の前に消防署があるのにも関わらず消防署員が事故に気付かなかったという事だ。

尚、気絶している間にファミレスにいた親切なオバタリアンが食事を続けながら通報していたのは後日談である。


幸いにも擦り傷程度であった私は何もできないカップルに業を煮やし自らバイクを歩道に寄せて通報をしたのだった。


「あのーすいません、たった今、事故があったんですけど・・・」


「あー、そうですか。えーと場所はどこですか?」


「○○とゆう目の前に救急車が待機してる交差点なんですが・・・」


「あー、今現地から通報入った場所ですね。」


「事故処理お願いできますか?」


「あー、今から事故処理車向かわせます。」


「(到着は)5分程度くらいですかね?」


「あー、そうですね。それくらいで現着できると思います。」


「それではお願いしますね。」


「はい。えー、救急(車)はもう必要ないですよね?」


「ハァ?ああ、そうですね。いらないです。」


「あー、それでは、先程の通報と内容確認なんですが・・・」


「ええ」 


「あー、対向車線から飛び出した車にバイクが突き刺さったとゆうことでよろしいですか?」


「ええ、クリティカルヒットしましたね。」


「あー、そうですか。かなり部品が散乱してるとゆうことですか?」


「部品だけではなく、50mほど吹っ飛びましたよ。」


「??、あー、では現場はかなり酷いと?」


「そうですね。それなりにです。」


「あー、了解しました。えーそれではお名前いいですか?」


「はい、○○ ○○です。」


「あー、事故を目撃された方ということですね。」


いいえ


「? あー、運転してて事故を起こされた方ですか?」


「まぁそのような類ですね。」


「あー、事故起こしておいてその言動はちょっと不謹慎だな。そんなことだから・・・」


人を死なせてしまうんだぞっ!!


ブッチ~ン


「ハァ??あんた何言ってんの?アホちゃうか?


「なんだね、君!!その言葉は!!!」


「なんだね!!ってあんたがなんやねんな?俺がいつ人をはねたって言ったんや?」


「?????? あの~、もしかして・・・・・バイクを運転してて・・・・」


亡くなった方ですか?


「ええ(笑)そうですね。死にかけましたね。 」


生き返ったんですか!????


「そうですね。ザオリクしてもらいました。 」


賢明な皆さんにはご理解いただけたであろう。ファミレスで事故を目撃しながらも食事を続けながら確認もせずに通報したオバタリアンが、「重大事故発生」と通報すべきところを「死亡事故発生!!」と誤報してしまったことがこの物語の発端である。オバタリアンの決め付けた通報とまず初めに誰からの通報かを確認しなかった警察官の行動がみごとに合わさり、作り話の様な実話が誕生したと言えよう。もちろん、この日の夕刊で、


ちょっと笑い話のトップを飾ったのは言うまでもない。


ちなみに紙面では死んだはずの少年Aから電話が・・・ってなってましたねぇ(笑)