アリとゾウ
(みなみ)(しま)に、かわいいかわいいありさんが()まれました。
名前(なまえ)は、ありんちゃん。ありんちゃんは、(うた)()きで、お(とう)さんとお(かあ)さんと(うた)を歌って、(たの)しく()らしていました。
そして、ありんちゃんは、すくすくと
(そだ)ちました。
ところが、



(さい)になったありんちゃんは、突然(とつぜん)病気(びょうき)になりました。
病院(びょういん)先生(せんせい)が、こう()いました。
「これは、あらら
(びょう)という病気(びょうき)です。ほとんど(ひと)にうつることはないし、いい(くすり)もできて(なお)るんだけど、傷口(きずぐち)から、たまにうつることもあります。あらら病院(びょういん)(はい)れば、(なお)(ぐすり)もありますよ。」
そのころ、あらら
(びょう)になったものは、みんなとは(はな)れて()らさなければならないという()まりがありました。また、この病気(びょうき)のことはみんながあまり()らなかったのでとても(こわ)病気(びょうき)だと(おも)われていました。
ありんちゃんは、よくわかりませんでしたが、ほかのあらら
(びょう)のアリたちと(おな)じように、病院(びょういん)(はい)ったのです。


病院(びょういん)にはたくさんのアリたちがいました。(なか)には、あらら(びょう)(おそ)ろしい病気(びょうき)(おも)われていたので、家族(かぞく)(しん)せきの(ひと)迷惑(めいわく)がかからないように、名前(なまえ)()えたアリもいました。
ありんちゃんの
病気(びょうき)は、(ほか)(ひと)よりも(かる)かったので、(さいわ)12(さい)のときに(なお)りました。
(いえ)(かえ)ったありんちゃんは、うれしくてうれしくてたまりません。だって、病院(びょういん)での生活(せいかつ)は、さびしくて、つらくて、(かな)しい(おも)()ばかりだったのです。


それから
10(ねん)、ありんちゃんは、(だれ)にもあらら(びょう)のことは()えず秘密(ひみつ)にしていました。もし、自分(じぶん)病気(びょうき)のことが()られてしまったら、いじめられるのではないかといつも不安(ふあん)だったのです。
そんなありんちゃんは、
病気(びょうき)のことを(かく)して無理(むり)をして(はたら)いたため、また(まえ)(おな)じあらら(びょう)になってしまいました。
病院(びょういん)(もど)ったありんちゃんの生活(せいかつ)といえば、1つの部屋(へや)8(ぴき)のありさんが()らし、()()障子(しょうじ)(やぶ)れ、とてもきれいとはいえませんでした。ごちそうも()べられず、入院(にゅういん)しているありさんの包帯(ほうたい)(あら)ったり、看護婦(かんごふ)さんのお()(ごと)まで手伝(てつだ)っていたのです。
ありんちゃんは、
病院(びょういん)(なか)で、ときどき()きな(うた)をうたったり、うたをつくったりしました。「(わたし)は、(はや)元気(げんき)になって()きなところへ()きたい。()きなことをしたい。」


仲間(なかま)のアリが()いました。「なぜ、ぼくたちは、(そと)へも自由(じゆう)()られないんだ。自分(じぶん)のことは自分(じぶん)()めたいよ。ゾウに()められるなんておかしいじゃないか。こんなおかしい()まり()えようよ。みんなで(ちから)()わせて、きまりをつくったゾウに()いに()こう。
この
(もり)では、ゾウの()めたことはみんなが(まも)らなければいけませんでした。ゾウは、(おお)きくて、(ちから)(づよ)く、とても(こわ)かったのです。でもアリたちは、自由(じゆう)になりたかったので、勇気(ゆうき)()していったのです。
ところが、ゾウは
(はなし)()かず、(なが)(はな)でふう?っとアリたちを、()()ばしてしまいました。


(つぎ)()、ゾウに()()ばされたアリの(とも)だちが(あつ)まってきました。
「みんなくやしいじゃないか。ぼくたちが(なに)をしたっていうんだ。ゾウは自分(じぶん)都合(つごう)のいいことしか()かない。(ちい)さな(むし)たちの()うこと、いつも()いてやらないじゃないか。なのに、ライオンやとらの()うことなら()いてやる。このまま(だま)って我慢(がまん)するのか?」
「いやだよ。このまま我慢(がまん)したらぼくたちは、ずっと我慢(がまん)(つづ)けなければならない。みんな、それでいいのか?」
「そうだそうだ。もう我慢(がまん)するのはよそう。間違(まちが)っているのはゾウの方なんだから。」


アリたちのいかりを()き、(もり)動物(どうぶつ)たちも(あつ)まってきました。かめが()いました。
「ゾウは自分(じぶん)一番(いちばん)えらいと(おも)っているようだけど、ぼくたちの気持(きも)ちはあまり(かんが)えてくれないよね。そういえば、これまでぼくもおかしいなと(おも)ったことがあったよ。ぼくたちも協力(きょうりょく)するよ。いっしょにゾウの(ところ)(はなし)()こう。」
(もり)動物(どうぶつ)たちは、あらら(びょう)のことをアリたちから()いて、ゾウのおかしさに()づいてきたのでした。

さすがのゾウも
今度(こんど)()らん(かお)をするわけにはいきません。みんなが()いているからです。


あれから4年、アリや(もり)動物(どうぶつ)たちが何度(なんど)も何度もゾウのところに(はなし)()き、やっとゾウも()まりを()えました。
それで、あらら(びょう)のアリたちは、病院(びょういん)から()てもよいことになりました。
ありんちゃんの(とも)だちが()いました。
「ねえ。ありんちゃん、ぼくは、自由(じゆう)になれてとってもうれしいけど、(いま)までいっしょに応援(おうえん)してくれた(もり)(とも)だちができたこともうれしいよ。」
『そうだね。わたしもよ。』(ほか)のアリたちも()いました。
「よかった。よかった。なんども()んでしまいたいと(おも)ってきたけど。 ()きてて()かった。」
アリたちは(なみだ)(なが)して(よろこ)びました。


さて、自由(じゆう)(もり)()てよいことになったありんちゃん。でも30(ねん)病院(びょういん)(なか)に入っていたので(もり)での生活(せいかつ)仕方(しかた)がわかりません。(もり)でえさを(あつ)めたり、(いえ)(つく)ったりできるかな?自信(じしん)がないな。(こわ)いよお。(もり)動物(どうぶつ)たちがわたしのことを(へん)()()るかもしれない。(わら)うかもしれない。いやだ。
ありんちゃんは、(かな)しい気持(きも)ちを(うた)にしました
「わたしは小さな小さなアリ、わたしはいつも地面(じめん)ばかり()てきた。でも、(から)()たい。(から)()たい。」
その(うた)()いた(とも)だちが()いました。
「ありんちゃんの(うた)って、なんだか(むね)(ひび)くよ。(わたし)まで、勇気(ゆうき)()てくるよ。みんなの(まえ)(うた)ってよ。(わたし)が、コンサートを(ひら)くから。」


そして、ありんちゃんは(うた)(うた)った。これまでの(かな)しい気持(きも)ち、(まよ)っていた気持(きも)ち、(くる)しい気持(きも)ち、(うれ)しかった気持(きも)ち。
(もり)動物(どうぶつ)たちは、(しず)かに()いた。
「ありんちゃんの(うた)素敵(すてき)だね。素敵(すてき)だね。これからも(うた)(うた)(つづ)けて。」
ありんちゃんは、みんなの言葉(ことば)(すこ)勇気(ゆうき)が出てきました。
「あきらめたら()わりだな。もう(すこ)しがんばってみよう。もう(すこ)しががんばってみよう。」 
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