2012Jリーグ ディビジョン2 第41節 大分トリニータ VS モンテディオ山形 |
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2012.11.04 | |||
熱を帯びた空気がスタジアムに漂う。 決戦を前に選手たちの武者震いを我がことのように感じ取るサポーターたちの熱気。 負けるはずがない。 勝利を信じた、かすかなざわめきが混じり合うスタンドは、今、選手入場のときを迎える。 瞬間。 青く染まったゴール裏から、力強い骨太の黄色い文字が浮かび上がる。 GO!J1 今や、ゴール裏お手のもののコレオグラフィ。 その陰には多くのサポーターたちの産みの苦しみ、根気強い作業、周到な準備、不安、惜しみない協力がある。 だからこそ、選手たちは、コレオグラフィに勇気をもらう。 |
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GK丹野研太、今季リーグ戦初先発。 この大一番で、GK清水圭介が体調不良。 コンディションのよい選手を使うという田坂監督の判断は、選手を信じるという一念あってもの。 信頼を背に落ち着いて試合に入った丹野は、持ち前のコーチングも発揮し、山形を無失点に抑えた。 |
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気迫が違う。 山形イレブンを飲み込むかのような勢いで試合を支配する。 再三の左サイドからのチャンスメイク。 木島がウラに抜ける、ジョンハンが突破する、安川が追い越す。 丸谷はしつこくしつこくねばり強くボールを絡め取る。 永芳が、縦横無尽に駆ける、いいリズムでパスに絡む。 |
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前半、スコアレス。 田坂監督の「前半は最高、良い攻撃、良い守備ができている。」というコメントが、後半の得点を予感させる。 |
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17028人。 J1への期待の高さを示す数字だ。ぎっしりと密度の高いゴール裏。 何年ぶり、あるいは初めてという感じの人も多いバックスタンド。 この観衆の前で、負けるわけにはいかない。いや、勝たないわけにはいかない。 |
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山形サポーターも必死だ。 わずかながら残るプレーオフ圏内の可能性は、勝たないことには始まらない。 昨年までJ1にいたプライド、1年で戻ると意地がサポートのボルテージを上げる。 |
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スタジアムが歓喜に湧く。チャントを歌い、叫ぶ。 木島悠。 苦労人のプレーは、あきらめが悪い。 倒されたって、何だってあきらめずにボールに食らいつく。 エンドラインぎりぎりまで切れ込んでラストパスを送る瞬間、心臓は最高潮に高鳴る。 CKからの密集の中で最後にボールをけり込んだのは、木島だった。 先制ゴールは、前半のスコアレスのストレスを吹き払い、スタジアムのボルテージをマックスに引き上げた。 ファイティングスピリット。 安川有を一言で表現すれば、この言葉が似合う。 どんな体勢でも、怖れず勇気を持って飛び込む。ルーズボールを逃さず走る。 チャンスと見れば、サイドを果敢に駆け上がる。 自らの足で、ビッグチャンスを2度も作った。 中途半端な遠慮と戸惑いで窮地に追い込まれるかつての姿はもうない。 森島康仁。 類い希なフィジカルとパワー、テクニックを兼ね備えながら、メンタルの脆さを露呈し、なかなか結果を出せなかった。 しかし、この重大な局面で、次々と得点を重ね、チームをJ1に近づける原動力となっている。 その落ち着いたプレーと言動は、不動のエースの名にふさわしい。 貴重な追加点をもたらしたのも、落ち着き払ったゴール前でのプレーだった。 |
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たかまつ〜だ〜いき〜お前のゴールで山形倒せ〜。 森島に変わってピッチに入った高松大樹。 チャントに合わせてサポーターはタオルマフラーを振り回す。 サポーターで埋まったスタンドで一斉に歌い、タオルを振り回す光景は壮観だ。 スタジアムの空気が一変する。 ケガとつきあいながら、ベストコンディションでのプレーはできなくても、チームのために何をすべきか分かっているベテランのプレーは、回りの選手を落ち着かせ、試合をあるべき方向へ導く。 |
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チェ・ジョンハン。 大分の左サイドに君臨する王様だ。 タテへの突破からのクロスは、守備の体制を整える間を与えず、しかも精度が高い。 中へ中へ切れ込んでのシュートは、威力があり枠を捉えるコントロールを持っている。 そしてスキを逃さないハンターの目を持つ。 山形の気力を断ち切った3点目は、バックパスがルーズになった瞬間をかっさらっい落ち着き払って決めたジョンハンのゴールだった。 |
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3−0。 ふつうなら、試合を終わらせにかかるスコアだ。 しかし、この試合の大分は違った。リスク管理をしながらも、4点目を狙いにいった。 そういうふうに見えた。 自動昇格を目指すには、得失点差が最後の最後にものをいう可能性が高い。 ただ終わらせるわけにはいかないのだ。 アディショナルタイム。 サポーターは、タオルマフラーを掲げ、勝利を確信した凱歌を歌う。 トリニータオーレ。 この特別な試合で、特別な歌が歌えるのは、最高だ。 言葉にならない感慨が胸を満たす。 ホーム最終戦。 スコアも内容も完勝と言ってよい勝利は、次節アウェイ松本戦にJ1自動昇格の可能性を残した。 京都が負け、湘南が引き分け以下で大分が勝つというミラクルな可能性だ。 だが、この山形戦の勝利は、そういうミラクルが信じられる勝利だった。 リーグ戦では、往々にしてこういうミラクルが起こりえる。 その場合、必ずキーマンとなる選手が、特別な力を発揮し、奇跡を起こすのだ。 宮沢正史。 一時はプロ生命も危ぶまれた不遇の時期を過ごした。 しかし、今の宮沢は大分のキャプテンとしてベテランの経験を生かし、アンカーとして活躍する。 いち早く危機察知し、穴を埋める。 ボールを奪えば、展開力を生かし、一転ビッグチャンスにつながるロングパスを演出する。 そして、フリーキック。 バーを叩く惜しいシュートが続いている。 これは、勝利のフリーキックとなる予兆に間違いない。 最終戦は、宮沢正史のゴールが、大分に奇跡を起こす。 |
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<J'sGOALより結果> | |||
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reported by miyashu | |||
|風に吹かれて| |