「草木名のはなし」(「語源一覧」を含む)に記載の事項を利用されることは、原則として自由ですが、その場合には、次に掲げる項目の一つを必ず明示してください。

1)http://www.ctb.ne.jp/~imeirou/

2)和泉晃一

種    類 語     源     抜    粋
84
スイセン  麻痺の意。スイセンの鱗茎には、神経を麻痺させるアルカロイドを含み、これを食すると心臓麻痺をおこすことが知られている。また、花に強い匂いがあり<<頭痛を引き起こすほどの催眠性がある。スイセンは  ギリシャ語のnarkis(ナルキソス)sosの訳語であり、その語幹 narke(ナルケ)、すなわち『麻痺』に由来する言葉とさている。
83 センリョウ

マンリョウ
(A)漢名「(せん)(りょう)草」の転。仙霊とは不老長生の術を会得した仙人の意。わが国では、これを仙境から(もたら)された仙物すなわち蓬莱飾(ほうらいかざり)の意に解し「(せん)(りょう)」と表記したが、後に「千両」と改めた。
(B)両者ともに、冬季に珠玉の果実をつける常緑低木。マンリョウの果実は深紅で輝きがあり葉も厚くて艶があるなど、「千両」に勝るという意味合いから「万両」と名付けられた。  
82 ナナメノキ 滑滑(ナメナメ)の木」の意。本樹の樹皮からトリモチがとれる――樹皮をはぎ、水につけて腐らせる。それを取り出し、臼でつくと「ぬめぬめ」として(なめ)らかな、ゴム状のトリモチ(黐)ができる。それで、本樹が「ナメナメ(滑滑)の木」と呼ばれ、これが詰まって「ナナメノキ」となったもの。
81 キリンソウ 黄輪(キリン)(ソウ)(リン)は花の意)、転じて、麒麟(キリン)(ソウ)。キリンソウは、岩上に細花を群生する、『強くて、か細い』イメージの草本。花が『黄色』で黄輪草の名がある。また、伝説上の一角獣・麒麟は『強く』て、首の『細長い』、胴体の『黄色』なイメージの仁獣。両者のイメージが似通うことから、黄輪(キリン)草を麒麟(キリン)草と洒落(シャレ)たもの。
80 フ  ジ

(かづら)の転。現在、フジといえば、初夏に紫色の花をつけるフジ(狭義)をいうが、古くは、広くフジやクズを含む蔓性植物の全般をさした。したがって、フジという用語も(カヅラ−カヅ−クヅ−クヂ―(k−f 子音交替) ―フヂ)と変化したものと考えられる。なお、「フヂ」は現代仮名づかいにより「フジ」と表記される。

79 サカキ (さか)()の意。サカキは、外部からの邪霊の侵入を防ぐため神域の境界に植えられた木をいい広く常 緑の木(サカキ、ヒサカキ、オガタマノキ、シキミ、クスノキなど神前に供せられる木)を総称した。もとは特定の木の名はなかったが、のちに今いうツバキ科の常緑小高木のサカキを指すようになった
78 クチナシ

  (くちばし)(なし)の略。古くナシとは、果中に多くの細かい種子を内蔵する果実のことをいった( 例、ヤマナシ・サル ナシ・アギナシなど)。果実に6稜があり、その先端から嘴状の萼片を伸ばす格好が、クチバシすなわちクチをつけたナシであることから、本樹がクチナシと呼ばれた。

77 カラタチ

(から)(たちばな)の略。わが国では、タチバナは清らかで芳醇な香りをはなつ、高貴にして、めでたい花として貴ばれる。それに対してカラタチは、全草棘におおわれ痛々しく、花に香りも乏しく劣っているので、(から)(中国)原産の異質なタチバナの意味から、こう名付けられたもの。

76 ジャガイモ 1598年ジャガイモは、スペインから長崎に渡来し、南京(ナンキン)イモと呼ばれた。南蛮船が舶載してき た「珍奇な外国産のイモ」の意である。江戸時代ジャワのジャカトラに根拠をおくオランダ(ジャガタラ) 
が外貿易を専任するようになり、その名がジャガタライモ
(ジャガイモ)と変えられた。
75 ク  ズ

()(つら)の意】クズは繁殖力が強く、地上を這いまわるが、その蔓には黄褐色の粗い毛が生え、また葉裏は     白毛で白く、全草が毛に覆われる。それで、クズは当初()(つら)(ツラは(つる)の上代語)―(かづら)と呼ばれた。ところが、カヅラが蔓草の総称となるにおよび、クズはカヅラ−カヅ−クヅークズと変容を強いられた。

74 タチバナ タチバナは、海外から持ちかえった()道間(ぢま)(もり)の名にもとづく「タヂマ(ばな)」に由来するとする説があるが、タチバナは日本に自生するところから、本説は正しくない。古来、「香ぐはし花橘」と歌によまれるように、「清らかな香りを漂わせる花」を意味する「立花(たちばな)」が、その語源であるに違いない。
73 ウ メ 【「梅」の漢音マイ を、日本語に写したもの。】飛鳥時代末期、ウメは唐から樹名マイとしてわが国へ伝えられた古く日本語の発音には制約があり、ai という二重母音は許されなかった。それで、mai (マイ)→ me (メ:乙類)と転換され、ムウメのように発音され、これが詰まってウメとなった。したがって、ウメの語には意味がない。 
72 タ  ケ 高木(タカケ)の中略。タケは樹高が高く、稈も木質化するので、初め「高木(タカキ)」と名付けられた。しかし、タケは@幼竹期に急成長したのちは、その成長を止める、A稈も中空で通常の樹木と異なることから、「()」が母音交替形ケの「高木(タカケ)」とされ、これが「(タケ)」と詰まった。
71 モ  ミ 古語「 (おみ)()」の転。ハリモミやイラモミが球果を枝に下向きにつけるのに対し、モミは球果を上向きにつける。モミの球果が枝上に多く立ち並ぶさまが、主君の面前に居並ぶ群臣の様子を連想させることから、古く本樹が「臣の木」と呼ばれた。その「臣の木」のオミがモミと転じたもの。
70 ナ シ 古代、シ(今のギシギシ)に代表される一連の植物群(シ植物)があり、味の酸渋であるのを特徴とした(例:()(スイバ)、おほ()(ダイオウ)、いち()(ヒガンバナ))。本樹は野生種ヤマナシの園芸品でシ植物とされたが、園芸化が進むに伴い果実の酸渋味も薄れ、これが「シでないシ」と呼ばれようになり、更にナイシ―ナシと変じた。
69 ヒガンバナ 彼岸花の意。毎年、秋の彼岸ごろになると、きまったように花をつけるので、この名がある。古名イチシは[イチは数字の「一」。シは、球根(鱗茎)に有毒なリコリンを含み、「舌を刺激する味」をもつ植物の意。]葉に先だって花茎をのばし、その頂に鮮紅色の花を開くことから、この名となる。
68 クルミ 果る実(く み)クはクダモノ(果物)のク、ルは連体助詞、ミは実。木の実(こ み)】の意。縄文遺跡からクルミの皮が出土している。上古、本樹の果実は、クリと共に主用食糧として「果る実(く み)」と名付けられた。この名の中から、『クル』がクリとして分離し(クリの語源、参照)、残ったクルミが本樹の名となった。
67 ク リ ()()【クは果物(クダモノ)のク。ルは連体助詞。「木の実」の意】の下略。太古クリなどコノミ類は主要な食糧源で、一括クと呼ばれていたらしい。この内クリは量も多く渋抜きも不要なことから重宝され、特に他と区別されクルミと名付けられた。やがてこの末尾が脱落しクル―クリと転じたもの( u-i子音交替)
66 クヌギ ()の木【クは果物(くだもの)(木のもの)のク】の意。古く、木はクまたはクク・ケといい、木と木の実をいう語であった。ところが、新語のキが木一般をさす語となり、果実の木がクノキとされた。このクノキがクヌギに転じて、特定木を指すようになると、他の果実であるクリ・クルミなどの語が派生した。
65 ナ ギ余録 ()ぎ」 (海面に波風が無く(● )( ● )やかな状態にあること。無事平穏) の意。本樹は葉に特徴がある。すなわち、葉は広く、平らで、しかも滑らかである。この葉のイメージが、海面の凪いだ状態に重なることから、本樹がナギと名付けられ、その葉が航海の無事平穏を願う船乗りの“ お守りとされた。
64 ナ  ギ ()ぎ」 (海面に波風が無く(● )( ● )やかな状態にあること。無事平穏) の意。本樹は葉に特徴がある。すなわち、葉は広く、平らで、しかも滑らかである。この葉のイメージが、海面の凪いだ状態に重なることから、本樹がナギと名付けられ、その葉が航海の無事平穏を願う船乗りの“ お守りとされた。
63 コ ウ ゾ (かう)()の意。(コウは(かみ)の音便。ソは衣類の意の()。)(かみ)()とは、神の御召物として神前にささげられる衣料のこと。(かみ)()が本樹の樹皮の繊維で作られ.たところから、これが樹名に転化したもの。なお、コウソという語は南太平洋諸島の樹皮衣料の名称kapa の影響を受け生まれた( カパ―カフ―カフソ―コウゾ )
62 カ ツ ラ 香連(かつら)の意。落葉の頃、清らかな香りが絶え間なく連なり漂うことから、本樹にカツラの名がある。因みに、「日本書紀」では「香木」と書きカツラと( よ)ませているる。また東北地方では、夏、本樹の葉をとり乾燥、挽いて粉にする。これが抹香で盆に祖霊をまつる香に焚いたという。
61 ニワトコ 削掛は、木質が白く軟らかな木の皮を削り、枝の周りに垂れ下げたもの。幣帛(へいはく)(ぬさ)として神事に用いられた。古代、この材に専らニワトコが使用され、神官が御幣(ごへい)に用いたところから、これが「神官の木」すなわち「(ミヤ)()()()」と呼ばれ、このミヤツコが転じてニワトコとなった。
60 ワサビ (ワシリ)()(アフイ)の意。本草は山間部の渓流に自生し、その葉はアオイによく似る。それで、浅瀬の「走り水に生えるアオイ」( = ワシリ(走)+ミ(水)+アフヒ(葵の古訓)。 ミは脱落しやすい音。)の意から「ワシリミアフヒ」と呼ばれれ、これが ワシンアフヒ→ワシァーヒ→ワサヒ→ワサビと変化した。
59 ガ マ (カニ)(ババ )の意。まれたばかりの、れをらない、らかな赤子生後始めてする便。これがカニババ。色黒がある。一方、ガマの神事のタスキにいられた清浄なもの。果穂黒褐色円柱形。この「清」にして「」のイメージから、本草がカニババとばれ、これがカンバ→カバ→カマ(ガマ)とじたもの。
58 チシャ ()(くさ)の意。本草は乳管がよく発達し、茎や葉などを切ると、切り口から乳状の液が流れ出る。それで()(くさ)が詰まって本草の名となる。ちなみに、学名Lactucaも乳を意味するラテン語lacに由来し、漢字「酪」(牛や羊などの乳から造った飲料)この音訳という。
57 タラノキ 手荒らしの木、の意。タラノキは全体に刺がある。若葉の葉柄や葉軸の刺は細かいが、直立する幹の刺は大きく鋭い。この刺はタラの芽採りには大敵で、手を痛めることが多く、本樹が「手荒らしの木」と呼ばれたが、これが詰ってタラノキとなった。
56 カタクリ カタコユリの約。幼草期のカタクリは、まだら模様(鹿の子模様)をつけた葉を1枚(片葉)だけ出し、経年成長を繰り返すので、「片葉鹿の子」と呼ばれた。このカタハカノコがカタカゴ(カタクリの古名)・カタコ(カタクリの別名)をへて、カタコユリ・カタクリとなったもの。
55 マンサク 本樹は、布を細く裂いたような花を枝一杯につけるので「万裂(マンサキ)」と名付けられた。しかし、この「裂(サキ)」が「幸(サキ:栄え。植物が繁茂すること。)」に通ずることから、この花が「万幸(マンサキ)」と考えられようになり、その名も豊年満作の「マンサク」と改められた
54 シ キ ミ (しき)()。本樹の(A)袋果は星形に並び、(B)葉は四季を通じて茂り、枝に輪状につく。(C)花被は常軌の数より多く(D)全株有毒などシキミには不思議な性質が多いことから、その名をえた。[シキ(頻):絶え間なく次々と重なりつづくこと。ミ:海神(わたつみ)()と同根]
53 コノテガシワ 児手柏の意。コノテガシワの葉は表裏の区別がつきにくく、嬰児の手のひらに似ているところから、この名がある。葉の表も裏もともに緑色なので、フタオモテ(両面)ともいう。なお、漢名の側柏(そくはく)は、葉が側(そばだ)つことに由来する名前である
52 カ   ヤ 古語カヘの転。秋、カヤは楕円状の果実(じつは種子)をつける。それは緑色に輝き貝殻を思わせる。貝は古語でカヒ。古語では「殻』も同じカヒ。「実」はムであるから、カヒムは「貝殻のような果実」の意。これがカヒム→カヒヌ→カヘヌ(色を「変えぬ」常緑樹の意)→カヘと転じ、カヘが樹名となったのである
51 カシノキ 上古、本樹の葉に、供物の食事をもって神を祀ったことから、この葉が「ケシキハ()(しき)()」と呼ばれた。これが「ケシキハ→カシキハ→カシイハ→カシハ」と音転、このカシハからハ(葉)をとり、本樹の名前が「カシ」とされたもの。
50 カ シ ワ

原義:樫葉。古来、カシ(樫)は神聖な木で、神饌をカシの葉に盛ったことから、カシワ(樫葉)が食物を盛る器の代名詞とされた。古代、饌具のクボテ(葉椀)がコナラの葉で作られ、カシワが「コナラ」とされたが、江戸時代、巷間でカシワ餅が評判となって以来、「モチガシワ」がカシワの名を負った。

49 カラムシ

茎皮(から)繊維(むし)の意。カラは茎・幹。殻に通じる。ムシは、茎の外皮からとった繊維。古く、茎皮をそいで繊維をとったところから、本草をカラムシという。繊維をよって糸としたものがオ(苧)。それで本草にマオ(真苧)の名がある。カラムシの布地で織った越後縮みや、奈良晒しが有名

48 ワビスケ 安土桃山時代、千利休のころ、泉州・境に笠原七郎兵衛という町人がいた。神明町に住み、屋号を住吉屋と称したといい、数寄者として宗全侘助の名があった。この茶人がことの外この花を賞用したところから侘助と呼ばれるようになったもの。
47 イ  ネ ()()の意。イは息・生き・命のイで、生命力をあらわす語。ネは種子。生命の根源である米のなる植物の意。イネは、もと焼畑で栽培するオカボ(陸稲)を指したが、水田稲作の普及とともに、現在われわれの見るイネ(水稲)を指すようになった。
46 マ  ツ 「待つの木」の意。古く本樹は、常磐木で独特な樹形を保つ木であり神聖視された。それで、本樹を家の門に立て、神の来臨を期待して待ち、その神を奉ずることで幸せがもたらされると信じられていたところから、本樹がマツと呼ばれるようになった。
45 ムクノキ 文字以前の古い樹名で、ムクと名付けられた木。ムクとは、ムク毛の「ムク」(新葉に、細かい剛毛を密生する)と、「ムク(剥)(乾燥した葉で、竹・木・角などの器物を磨きはがす)と、清浄無垢の「ムク(無垢)(本樹を、表面のケガ レを磨きおとし清浄無垢な心をあらわす『無垢(むく)()』と見立てた)を意味する語。
44 マ  キ マキとは本来コウヤマキの名称で、「巻きの木」の意である。コウヤマキの樹皮は赤褐色で細片状に裂ける。分厚く、弾力があり、樹皮が幹に巻きつくようにつくところから、「巻きの木」の名をえて、これがマキとなった。現在、コウヤマキはコウヤマキ科として独立し、マキはイヌマキの名となる。
43 ススキ ススキ(濯)の意。秋の開花期、本草の穂色は、黄褐色または赤褐色、紫褐色を呈する。受粉後、果実が熟し始めると、これに見合うように穂が乾き、花下の毛が白く展開してくる。花穂が揺れ動き白変する様子が、水で汚れをすすぎ清めるのに似るところから、ススキが本草の名となった。
42 クスノキ 「クサ(臭)の木」の意。古代、強い臭気には、邪霊・邪気をはらう呪力があると信じられた。本樹は樟脳の匂いの強いことから、クサノキの名を得たが、のち、より強烈なクソ(屎・糞)ノキと変えた。しかし、このクソのイメージが嫌われるところとなり、これをクスノキ(O-U母音交替)と改めた。
41 エ ノ キ 吉木(えのき)で、めでたい木・縁起のよい木の意。古くエノキは、村の外れや橋の(たもと)などに植えられた。これらの場所は異界との境界で、ここでエノキが外部から侵入する邪神を撃退し、村の安全を護ると考えられた。つまり、エノキは辟邪招福の象徴であり、吉木(えのき)と呼ばれたのである。
40 アサガオ 朝の(かほ)(ばな)の意。一般に、朝に美しく咲きにおう花の総称である。古代は、キキョウ(キキョウ科)を指し、朝に美しいのはもちろん、夕べも美しい花をいった。平安時代以降は、もっぱらアサガオ(ヒルガオ科)を指し、朝に美しく咲き、昼には凋んでしまう花をいった。
39 イ チ ゴ (いつきの) 御子(みこ)の意。本草は、最初、大王陵のある丘の麓一面に生い茂っているのを見出されたところから、これが神につかえるミコに見立てられ、イツキノミコと呼ばれた。この名が短くイツミコ→イチミコと変化、イチンゴ→イチゴとなったもの。
38 アララギ 粗々(あらあら)()の約。野生のノビルがまばらに生えることにちなむ名。もともと、アララギはノビルの異称であったが、それが転じて、芳香を持つ植物群(フジバカマ・ヒイラギなど)や、高木・高草のイメージを持つ植物群(イチイ・キササゲなど)もアララギと呼ばれた。
37
ハハコグサ 正名ホウコグサ。これがホウコ(ホーコ)の類似音・ハハコから母子草と誤り伝えられた。本草の茎葉や頭花の冠毛は白く毛羽立っており、他の植物に見られない特徴を持っている。これが古くホウケといわれた ことから本草の名とされ、転じてホウコグサと呼ばれたもの
36
ツ  キ (つ)の木の意。古代、中大兄皇子(天智天皇)と中臣鎌子(藤原鎌足)は本樹の下で盟約を誓い、大化の改新を成就した――古く盟約の言葉には霊威があり、それが「唾」とともに本樹に憑依して、大化の改新が成功に導かれた――と信じていたことから、本樹がツキ(唾木)と呼ばれるようになった。
35 ナラノキ ナラノキとは「鳴り葉の木」の意で、コナラ・クヌギ・カシワなどの落葉樹群を指す樹名である。本樹は、秋の黄葉の後も枯葉が枝に残り、その枯葉が冬の寒風にさらされ葉音を立てる。それで、本樹が「鳴り葉の木」と称せられるようになり、この名が詰まってナラノキとなった。
34 イスノキ 日本神話にユツツマグシ(斎つ爪櫛:神聖な爪櫛(鬢の刺し櫛)の意。)という神聖な櫛があり、その櫛の材質はユツの木と考えられていた。古代、天皇・皇后・皇太子は、専らイスノキ製の櫛を使用していたので、本樹が神聖視され、ユツノキの名を得た。この名が(ユシまたはユスと)転化してイスノキとなった。 
33 ヤクシソウ 薬師草の意で、奈良薬師寺にある仏足(ぶっそく)(せき)の文様が本草を連想させるところからの名。仏足石は釈迦(しゃか)の足跡を刻んだ石。その足裏に千輻輪(法輪)などを描く。ヤクシソウの茎上葉はヘラ型、基部で茎を抱き、キクに似た花をつける。この葉を仏足石の足裏に、また花びらを千輻輪に見立てたもの。
32 ガガイモ (いも)の転。古名をカガミといい、ガガイモの袋果の内面がテラテラとして鏡を連想させるところから、この名を得た。カガミにイモがついたのは江戸の中期、幕府が甘藷栽培を奨励したことに影響を受けたものだが、ガガイモの袋果が紡錘状であるので、これを甘藷(さつまいも)に見立てた。
31 オミナエシ 『オミナ』は女性的な草花の意、男性的な近縁種オトコエシに対する語。『エシ』は(へし)』の意、押さえつけたような平たい花序をいう。したがって、オミナエシは茎頂に黄色い女性的な花をつけ、しかもその小花が掌で押さえつけたようにぎっしりと並んで咲き、上面が平らな花序を作ることから、この名となった。
30  カラスウリ  古く、本草の中国名は「カ樓(かろう)または苦樓(くろう)」で、その発音がカラスの鳴き声に似るところから、カラスウリの名をえた。カラスウリとキカラスウリは、ともによく似たウリ科の蔓生植物で、当初、両者ともカラスウリの名で呼ばれたが、後に果実の色の違いからキカラスウリが区別された。([注]カ樓の“カ”の字 = 漢字「括」の手ヘンを、木ヘンに変えた字。) 
29 イシミカワ 石見(いしみ)(かわ)(大阪府河内長野(かわちながの)市)船井家に生える石見川草杠板帰(こうばんき)は、弘法大師一泊の礼に播種したものと伝え、他所に移すと枯れるという。本草の茎葉や根を刻んで黒焼きにし、その粉末を打撲傷損の薬として売り出したところ、弘法大師秘伝の妙薬として評判をえた。その生薬名が草名に転用されたもの。
28 ブ   ナ ()()の意(ムナ→ブナ)。ムはミ(実)の古語、「身」にも通じ、果実など中味の充実したものをいう。「菜」は食料となるべき糧。ブナの果実は生のまま、あるいは軽く炒って食べられ、古くは食糧に供せられたところから、ムナの名を得た。この果実名ムナが後にブナと音転し(m−b子音交替)、樹名に転用されたもの。
27 サツキツツジ 皐月(さつき)ツツジ(サツキのサは、田の神の化身である稲霊)の意。一般のツツジが咲き終わったころ、おそく旧暦五月(新暦六月初旬頃)に咲きだすツツジのこと。皐月(さつき)は、苗代から本田へ幼苗を移植する「植え」の「田月」が転訛した語。なお、ツツジという名前は、その花の形が筒状をなすことに基づく。
65 ウグイスカグラ 古名(ウグイス)(ノキ)本樹の木陰で鶯が「岩戸神楽」を舞うと見立てた名。歌舞伎の暗闘(ダンマリ) (暗闇(クラヤミ)の舞台で、役者同士が無言で探りあい、見得を切る)の場面で奏する太鼓・笛の囃子(ハヤシ)を「岩戸神楽」と呼ぶところからウグイスカグラを、「鳴き声は聞こえるが、声の主である肝心な鶯の姿が、暗くて一向に見えない」と洒落(シャレ)ていったもの。
25 アセビ 古名馬酔木(アシビ)。馬が本樹の枝葉を食べると酔ったように足が()えるので、これが「足廃(アシヒ)(足の(ヤマイ)と呼ばれた。このアシヒがアシビ(()())と濁音化され、樹名となったもの。また、馬酔木は「足廃(アシヒ)()」にも通じるところから、「アシヒキノ」(病のヤマと)同音の山に掛かる枕詞として用いられた。
24 ウ  ド (うつろ)の転。「ウドの大木」のことばどおり、本草は図体が大きいわりに軟弱である。その成分のほとんどが水分(約95l)で占められるからである。茎は切ったところから空洞化しやすく、材に利用するなど到底望めない。それで本草に「(うつろ)」の名前が与えられ、これが転じてウドとなったもの。
23 アスナロ アテヒ(当檜)アテは日陰・耐陰性ヒはヒノキの意でアテヒは耐陰性のヒノキを意味するアスナロは日陰の環境でも発根性がよく、挿し木・取り木がしやすい性質があり、択伐された林内の暗い空間に苗木植栽されたのでアテヒと呼ばれたこのアテヒがアスヒ(明日檜)アハハヒ(明日は檜になろう)アスナロ(翌檜)と転訛した
22 ス  ギ 古代、陰陽道的な考えから、ヒノキは「陽性」である「日の木」に基づく名であり、同様にスギノキは「陰性」である「月の木」に由来する名だと考えられた。しかし、同名である「槻」との間で名前の混乱が生じることから、ツキ→スキと変化し(s−t子音交替)、ツキノキ→スキノキ→スキギ→スギの名となった。
21 ト  チ 山間(ヤマアイ)の湿潤な土地に自生するトチノキは、しばしば年代を経た古木で、かつ巨木であることが多い。トチノキが食糧源として大切にされ、とりわけ蜜源植物として重要視されたからである。このため、本樹は「蜜蜂の木」と呼ばれ、これが転訛して(mitufati→mtufati→ntuati→toti)トチノキの名となった。
20 ガマズミ カマツカは、材が鎌の柄に用いられたことによる樹名で、古くはカマツカ(バラ科)とガマズミ(スイカズラ科)を指す名前であった。だが、カマツカが前者の正式名に専用され、後者は名を『失』う。そこで、ガマズミの中国名ジアミを日本風にズミと改め、旧名カマヅカから新生ガマズミへ変身したもの。
19 ツ ル ボ (ツル)飯粒(イイ)()の略。本草は、初秋に2〜3枚の長線形の葉の出た間から花茎が伸びだす。花茎は直立し分枝しない。蔓状の花茎の先端に米粒に似た花穂を付けるところから、(ツル)飯粒(イイ)()の名がある。それが(ツル)()()(ツル()に転化した。葉間に花茎をスルスル伸ばすので、スルボの名もある。
18 リヨウブ 龍尾の意(龍は、リョウが正音。リュウは慣用)。リョウブは夏、枝先に総状花序をつけ小花を密生する。この花序が円錐形をなすところから、これを白龍の尾((リュウ)())に見立て、更にリョウブと訛って樹名に転用したもの。リョウブは『飛龍の尾』の意味の名で、地上に咲く『虎の尾』(オカトラノオ)の対語。
17 マタタビ ワタタデ(?蓼)の意。ワタはハラワタのワタ、瓜の種の周囲の柔らかな部分。タデはヤナギタデ、古代から辛味が賞味された。マタタビの実がタデのように味が辛辣なことがワタタデの意。これがワタタヒ(海の鯛)・ワタタビ(海の旅)を経てマタタビ(股旅)と変化したものと考えられる。
16 アジサイ 鳬障藍(あぢさはふあゐ)の略アヂはアヂガモ(いまトモエガモ)、冬季シベリアから日本へ飛来する美しい渡り鳥群れをなし行動し捕獲網にかかるのがアジサハフの意アジサイが藍青の美しい花弁を多く咲かせる様子を多数のアヂガモが網にかかり羽ばたく有り様に見立てた(紫陽花はアジサイでない)
15 ギシギシ 擬宝珠ボウの重畳語。擬宝珠とは、橋の欄干などの柱頭につけた、ネギの花(ネギ坊主)状の飾り金具である。夏季ギシギシは茎の回りにびっしりとソウ果を付ける3稜のソウ果は尖頭形の翼に包まれる)。これを擬宝珠に見立て、かつ数の多さを表すため、重塁語でギシギシと呼んだ。
14 ス ミ レ スミレは左右相称・五弁の離弁花で、下弁が後方に袋状に長く突き出す。この突起部分を距と呼び、かつて子供たちはスミレ草の距を引っ掛けあって遊んだ。このときの掛け言葉「相撲取れ(古語:すまひとれ)」が訛って(スマヒトレ→スマイツレ→スミッレ→)スミレとなり、本草の名前に転用された。
13 ハ コ ベ

(はく)(べら)(帛は上質の絹布)の略。ハコベの花は、小型ながらも深く切れ込んだ5弁花に特徴がある。その白く・10弁とも見える・奇麗なハコベ花を、小さな箆形の・色艶のよい絹の生地で造った造花に見立てた。別名のアサシラゲ(朝白餉)は、ハコベの小白花を炊き立ての朝飯(粒)に喩えたもの。

12 ツ バ キ 「唾(つばき)の神」が宿る木の意。古代、大和・三輪山麓の海石榴市(つばきち)の地は、ツバキの生い茂る歌垣の地であった。歌垣の男女の交わした約束事に「唾の神」が現われ、それが周辺の木々に憑依(ひょうい。のりうつる)すると信じられたところから、その木がツバキと呼ばれるようになったもの。 
11 ヒ ノ キ 古代、ヤマト王朝は奈良平野の南東部に起こったが、当時このあたり一帯はヒノキの林に覆われていた。王朝の大王は日神信仰からヒツギ(日嗣)と呼ばれ、その宮廷はヒノミカド(日の御門)と呼ばれたところから、周辺に生い茂る木がヒノキ(日の木)と呼ばれるようになった。後にヒノキには、檜の国字が当てられた
10 ウバメ ガ シ この木は海浜のガレ場に多く自生するところから、ウミベガシ(海辺樫)の名を得たこれがイマメガシ(いり)(まめ)(がし)。枝葉を燃すと、豆をいるようにパチパチよくはぜる)・ウマメガシ(馬目樫。枝先のテラテラした葉が馬の目に似る)を経て、ウバメガシ(姥女樫。葉に老女を思わせる(しわ)がある)と転訛した。
ヨ モ ギ 枝茂茎(ヨモギ)の意。本草は、茎頂でよく分枝し、その枝先に小さい頭花をびっしりと付ける草の意味から、「枝茂茎」と名付けられた。ヨモギのキは、ある種の不思議な霊力を表す語で、古くヨモギは魔除け・医薬の草と信じられていた。なお、ギと濁るのは連濁音によるものである。
キ    ク 中国の栽培菊は、重陽の節会の制度とともにわが国に渡来した。重陽は「重九」とも呼ばれたので、「クク」(九九)が「菊」の和名とされたが、この用語はすでに存在するところから、その後、菊の中国音であるキクへ変更された。
ゴ ン ズ イ

牛頭(ごず)の木」の意(ゴズ→ゴンズイ)。牛頭は牛頭(ごず)天王(てんのう)(祇園精舎の守護神。垂迹(すいじゃく)神・スサノオノミコト)で、その功徳を護符にしたのが午王宝印(頭天)である。ゴンズイは良質な薪材で護摩木に用いられ、特に午王宝印づくりの(だん)(もく)として使用されたところから、「牛頭の木」と呼ばれた。

タケニ グ サ 竹煮草の意。かつてタケニグサを緑肥とするため、土中に埋め込んだ。土中のタケニグサがグツグツ煮えるように腐食していく有り様を、竹を煮るのに見立てたもの。
ホ オ ズ キ 文月(ふうづき)の意。陰暦七月(文月(ふみづき))は盆月である。お盆に盆棚を設け祖霊を迎えた。幽界から帰ってくる祖霊の足元を照らす意味から、盆棚には赤いカガチ(酸漿。ホオズキの古名)を吊るし、これを文月(ふみづき)カガチ、略して文月(ふみづき)と呼んだ。この文月(ふみづき)がフンヅキ→フウヅキ→ホーズキ→ホオズキと転化したに違いない。
ア  ヤ  メ  漢女(あやめ)の意で、本来サトイモ科のショウブに与えられた名。現在はアヤメ科のアヤメを指す。日本に仏教が伝来した時、初めて仏門に帰依したのが漢女(あやめ)(渡来系子女)の稚児尼3人であった。本草の並立する剣葉の様子を、釈迦三尊を思わせる漢女(あやめ)・稚児尼の立ち姿に見立てて、アヤメと命名したもの。
セ ン ダ ン 近江・三井寺の「千団子祭」は安産・子育てで有名な祭りで、巷間では千団講または栴檀講の名前で知られる。一方、古名オウチ()の木は、鈴なりの実を付ける様子から「千団子」の木と見立てられ、これが三井寺の「栴檀講」に付会されて、センダンの名となったのである。
タ ン ポ ポ 茎の両端に割れ目を入れ水に漬けると、めくれて鼓状となるので、本草にツヅミグサの名がある。また、小鼓の打音名である「タ音」と「ポ音」が「ターン」「ポンポン」と響くところから、これがタンポポと擬音化され、本草の呼び名となった。
サ  ク  ラ サクウラ((さく)(うら)(さく)(うら))の略。先端の割けた五弁の小さな花が、梢一杯にあふれるように咲き誇るさまから、こう名付けられた。古来サクラの美しさは、その繊細美(花の細やかさ)と内面美(内から湧き出るように梢ににおうこと)にあると考えられた
今月の草木 語     源     抜    粋
スイセン
麻痺の意。スイセンの鱗茎には、神経を麻痺させるアルカロイドを含み、これを食すると心臓麻痺をおこすことが知られている。また、花に強い匂いがあり<<頭痛を引き起こすほどの催眠性がある。スイセンはギリシャ語のnarkis(ナルキソス)sosの訳語であり、その語幹 narke(ナルケ)、すなわち『麻痺』に由来する言葉とされている。

---植物名の語源・由来に見る日本のこころと文化---

 日本に、
―― 名は(たい)(あら)わす
 
という言葉がある。「
古事・俗信 ことわざ大事典」(小学館))によれば、「人間の
名前・物の名称は、よくその物の実体・本性を現わすものである」の意とある。

 いうなれば、
―― 日本の草木名は、そのものの本質的な特徴をよく言い現わしている
というのである。

 しかし、名前が直ちにその植物の本質と結びつくものではない。その名の
語源・由来が明らかにされて後、はじめて本性がしられるのであり、それを
収録したのが、上記「 草木名のはなし」である。
ア    カ  行
ア ヤ メ ガガイモ コウゾ タ  ケ ハ コ ベ
アサガオ カシノキ コウゾ2 タケニグサ ハハコグサ
アジサイ カ シ ワ コノテガシワ タチバナ
アスナロ カタクリ ゴンズイ タラノキ ヒガンバナ
アセビ カ ツ ラ タンポポ ヒ ノ キ
アララギ ガ マ サ カ キ
ガマズミ サ ク ラ チ シャ フ  ジ
イシミカワ カ   ヤ サツキツツジ ブ   ナ
イスノキ カラスウリ ツ  キ
イ チ ゴ カラタチ シ キ ミ ツ バ キ ホオズキ
イ  ネ カラムシ ジャガイモ ツ ル ボ
マ  キ
ウグイスカグラ キ  ク ス  ギ ト  チ マタタビ
ウ  ド ギシギシ ススキ マ  ツ
ウバメガシ ス ミ レ ナ  ギ マンサク
スイセン マンリョウ
ウ  メ クスノキ ナ  シ
ク ズ センダン ナラノキ ムクノキ
エ ノ キ クチナシ センリョウ ナナメノキ
クヌギ ニワトコ モ  ミ
オミナエシ ク  リ
クルミ ヤクシソウ
ワサビ
リヨウブ ワビスケ ヨ モギ

以下に掲げる植物名の語源一覧は、「牧野新日本植物図鑑」で語源未詳とするものを中心に取りあげ作成しています。詳細な説明については、該当の植物名をクリックしてご覧ください。