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大分合同新聞 ( 平成16年10月26日〜27日 朝刊)


同世代の活躍転機

挑戦のとき 第24回大分国際車いすマラソン大会



タン、タン、ターン。

リハビリをする訓練棟の一角に室内練習用のローラーがある。それに固定したレーサー(競技用車いす)のハンドリムを たたく音が響く。こもった熱を放散するため、頭の近くに扇風機を置き、風を受けながら、黙々とレーサーをこぐ。

魚返利明君(16)=別府養護学校高等部二年=は、今大会ハーフの部の最年少。初めて挑戦する。



初出場、熱こもる練習


車いすマラソンを始めて二年と少し。体は華奢(きゃしゃ)だが、車輪の回転に合わせてリズミカルに動かす腕はたくましい。 グローブを外した手のひらに、まめが破れたあとが幾つもある。

二分脊椎(せきつい)という先天性の病気で体にハンディがある。中学二年まで、つえを使って歩いていた。症状の悪化を防ぐ ため、三年生から車いすを利用している。今は別府発達医療センター(別府市荘園)に入り、治療を続けながら別府養護学校に通う。

マラソンに最初は消極的だった。担当理学療法士の加藤和恵さん(34)に勧められて始めたものの、元来、目立つのは大嫌い。人と話すのも苦手。 大会デビューとなった東京車いすマラソン大会(2002年12月)への出場も、「あんまり乗り気じゃなかった」と言う。

そんな気持ちとは裏腹に、大会新記録で優勝。初出場・初優勝の快挙に周囲は盛り上がった。副賞として新しいレーサーをもらった。初めてマスコミから取材された。

いきなりスポットライトを浴びての戸惑いの方が大きかった。“楽しい”という気持ちにはほど遠く、その後の練習も、したりしなかったり。


転機は03年、香港で開かれたフェスピックユース大会。アジア地域を中心に障害のあるジュニア選手が集まった。

初めて海外に行き、初めて国際舞台に立った。緊張の連続だったけれど、周囲には同年代の選手がいた。四百、八百、千五百メートルに出て銅メダルを獲得した。

「でも出場したのは各種目とも三人か四人。結局、自分は最後。負けだ。悔しい、もっと頑張ってみたい!」頑張っている選手 を目の当たりにし、消極的だった姿勢が1変した。目の輝きを増した。

(文章は「大分合同新聞 平成16年10月26日朝刊」に掲載されたものをそのまま引用しています。)



周囲の支えで成長


存分に楽しみたい


東京車いすマラソン大会と、香港でのフェスピックユース大会を経験し、積極的に練習に取組む魚返利明君(16)は昨年、六つの大会に出場し、ことし既に八つの 大会に出た。大分大会後の11月にある津山国際交流車いす駅伝(岡山県)の県チームに加わることが決まった。この駅伝は県チームが五連覇している。

ぐんぐん力をつけている魚返君。マラソンを進めた理学療法士加藤和恵さん(別府発達医療センター)は頼もしく感じている。加藤さんは車いすマラソンを指導した 経験はない。二人ともゼロからのスタートだった。

「どうすれば風の抵抗を避けられるか」「速く走るための練習方法は」。経験を重ねるごとに目標は高まり、試行錯誤を重ねる。 時々、意見が合わず「険悪な雰囲気になることもある」というが、「それだけマラソンに真剣ということの証。うれしい」と加藤さん。

二人で考えても分からないことは、先輩のアスリートに聞く。二人の熱心な姿勢に、ホンダR&D太陽(日出町)などが、施設の枠を越えて支えてくれた。

週に二回、大分市の田ノ浦ビーチに行き、ロード練習をする。それ以外の日は、別府発達医療センターの訓練室で、一時間から一時間半程度、固定したレーサーで 汗を流す。

ロード練習にはホンダR&D太陽のアスリートクラブのメンバーも顔を出す。先輩選手と一緒に潮風を受けながら、別大国道の歩道を走る。車の窓から顔を出して練習の様子を見る 人もいる。「もう気にならなくなった」。田ノ浦ビーチの駐車場からレーサーの整備を終え、さっそうと走り出した。

大会を走るたびに知り合いや、師匠と仰ぐ先輩、ライバルが増えた。いろんな大会で顔を合わせ、声を掛け合うようになった茨城県の針貝祥太君(16)、京都府の白須優也君 (19)が大分大会に出る。ライバルだ。

ベテランの花岡伸和さん(29)=東京都=は、技術面だけでなく、精神面でも支えてくれるアドバイザー。「大好きな先輩の一人。尊敬しています」。

「もしも東京の大会に出なかったら、今の自分はなかった」。マラソンを通して広がった世界。「存分に楽しみたい」。笑顔になった。

(文章は「大分合同新聞 平成16年10月27日朝刊」に掲載されたものをそのまま引用しています。)



大分合同新聞 ( 平成16年11月1日朝刊)


初挑戦、満面の笑み


出場者最年少の魚返利明君(16)はレースの後、「スピードに乗れた。沿道の人の声援も聞こえた。うれしかった」と満面の笑み。 初参加で53分47秒の好タイムだった。一緒に練習したハーフ優勝の渡邊習輔選手(36)は「よくやった」と握手を交わし、悪天候下 での力走をたたえた。


(文章は「大分合同新聞 平成16年11月1日朝刊」に掲載されたものをそのまま引用しています。)