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本書は、加害者の障害にあえて目をつぶり、ただの通り魔殺人事件として処理してしまうこの国の裁判、そして
無期懲役という判決で刑務所に閉じこめてしまうこの国のやり方に疑問を投げかけます。
被害者の家族と加害者の家庭のルポルタージュにも紙面が割かれています。特に加害者の家庭の悲惨な様子が描
かれています。知的障害があり生活能力のない父、ガンを患いながら一家の生活と自分の治療費を稼がねばなら
ない妹、その妹に金の無心をする加害者、この家族にやっと福祉の支援が入ったのが事件が起こってからでした。
「ここにあるのはなにか。福祉の支援からこぼれ、家族も離散し、あるいは家出し、食い詰め、追い込まれた挙
句の犯行である。刑務所を出所しても引き取り手はない、戻る場所もない、働き手として雇ってくれるところもな
い。ホームレスまがいの暮らしを余儀なくされるなかで、再び同様の行為をして刑務所に戻っていく。ここから
窺われることは、まぎれもなく、知的なハンディをもつ人たちが、事実関係をうまく語ることのできないまま自
白供述を取られ、裁判に乗せられ、覚束ない証言のままに刑務所に送られていく、という現実である。そして福祉
が支援の手を差し伸べてこなかったという現状である。」(240頁)
加害者の妹は事件の1年後の夏、支援者の手厚い支援を受けながらやっと手にした「人並みの生活」の中で他界し
ました。25歳でした。
本書を読み終えて、この本が、理不尽な凶行で20年の人生を突然断たれた被害者と25年の決して幸せとは言え
ない人生を送った妹、2人の女性への鎮魂の書でもあることをひしひしと感じます。
折しも、立ち上がるレッサーパンダの話題がマスコミをにぎわしています。すっくと立った風太君の立ち姿、否が
応でもこの事件を思い出させてくれます。
(田北)
自閉症裁判〜レッサーパンダ帽男の「罪と罰」:佐藤幹夫著、洋泉社、2005年、2,200円+税