障害者自立支援法の審議が国会で始まりました。厚生労働委員会では障害関係8団体の代表を呼んで意見を聞くなど盛んな論
議がされています。去る5月12日には東京の日比谷公園に約6千人の人が集まり国会まで届けと当事者の声をあげました。今
一番焦点になっているのはサービスを利用したときの負担の問題です。障害者自立支援法案ではこの利用者負担はどうなってい
るのでしょうか。厚生労働省のホームページに載った資料をもとに福祉サービスの利用者負担について紹介します。
どうして利用者負担が求められるの?
障害福祉サービスの利用は支援費制度が始まって以来、特に在宅を支援するサービスの利用は国の予想を超える勢いで伸びてい
ます。そのためにこのままでは財源が足りなくなり制度を維持することが難しくなってきました。また新しくサービスを利用し
ようとする人にまで必要なサービスが行き当たらなくなるおそれが出てきました。そこで、新たにサービスを利用する人の増加や
支援の必要度に応じたサービスの量を確保して制度を維持するために、利用者も含めて皆で費用を負担しようと言うのが利用者
負担の考え方です。増大するサービスの費用を皆で負担し支え合うことになります。
何を負担することになるの?
新しい制度で利用者が負担することになるのは、福祉サービスの費用の1割に当たる定率負担と食費や光熱水費などの実費負担
です。医療費や日用品費についても利用者の負担になります。
在宅でホームヘルプなどの居宅サービスを利用する場合はサービスの量に応じた利用料を負担します。通所施設を利用する場合
はサービスの量に応じた利用料に加えて食費を負担しなければなりません。入所施設ではそれらに加えて光熱水費も負担し、場
合によっては個室利用料などの負担も求められます。いわゆるホテルコストと言われる費用です。その他に医療費と日用品費は
自己負担となります。
今の措置費や支援費では本人あるいは扶養義務者の収入によって利用料の額が決まりますが、自立支援法では定率負担として使
ったサービスの費用の1割を負担することになります。これを定率負担と言います。
サービスの費用の1割ってどのくらいの額?
サービスの費用の1割はいったいどれ位の額になるのでしょうか。大変乱暴な例ですが現在の支援費の単価を見てみましょう。
ホームヘルプ支援費の1割は表のとおりです。夜間や深夜早朝は割り増しとなります。
| |
身体介護 |
家事援助 |
日常生活支援 |
行動支援 |
| 30分未満 |
240円 |
80円 |
|
240円 |
| 30分〜1時間 |
410円 |
160円 |
|
410円 |
| 1時間〜1.5時間 |
590円 |
230円 |
250円 |
590円 |
| 1.5時間〜2時間 |
670円 |
310円 |
340円 |
740円 |
| 2時間〜2.5時間 |
750円 |
390円 |
430円 |
890円 |
| 2.5時間〜3時間 |
840円 |
480円 |
520円 |
1,040円 |
| 3時間〜3.5時間 |
920円 |
|
610円 |
1,190円 |
| 3.5時間〜4時間 |
1,000円 |
|
700円 |
1,340円 |
| 4時間〜4.5時間 |
1,090円 |
|
790円 |
1,490円 |
| 3時間〜3.5時間 |
1,170円 |
|
880円 |
1,640円 |
デイサービスでは、ほっとのデイを利用する場合で1日が、区分1の人は480円、区分2の人は410円、区分3の人は350円とな
り、これに食費や入浴と送迎の費用などが加わります。
ショートステイでは、重心の人がめじろ園で1泊2日の利用をすると4,070円に食費などの実費が加わります。知的障害者(児
童)の1泊2日の利用は区分1の人で1,570円、区分2の人で1,430円、区分3の人で900円に食費などの実費が加わります。こ
れらの金額は参考としてご理解ください。
このようにサービスの費用は決して安価ではありません。そして、サービスを利用する回数が多く障害の重い人ほど負担が大き
くなります。1ヶ月にするとかなりの額になります。そこで、これに対して月額負担上限が設けられます。
月額負担上限はどうなるの?
サービスの費用の1割を負担する定率負担の部分について、1ヶ月にこの額まで負担すればよいと言う月額負担上限が定められ
ます。その額は利用者本人の属する世帯の収入などに応じて4つに分けられます。4つの区分は、「生活保護」「低所得1」
「低所得2」「一般」です。
「生活保護」は生活保護世帯で月額負担上限は0円です。と言うことは費用の1割を負担しなくても良いと言うことです。
「低所得1」は、市町村民税非課税で世帯主と世帯員のいずれも収入が80万円未満の世帯に属する人で、月額負担上限は15,00
0円です。障害基礎年金2級だけの収入でグループホームに単身生活する人などがここに当てはまります。
「低所得2」は、市町村民税の均等割非課税である世帯に属する人で、月額負担上限は24,600円です。これは障害者を含む3人世
帯で障害基礎年金1級を受けている場合、おおむね300万円以下の収入の人にあたります。
「一般」は、市町村民税課税世帯で、月額負担上限は40,200円です。
この月額負担上限は費用の1割に当たる定率負担についてだけです。だからそれ以外の負担である食費や光熱水費の実費、医療
費や日用品費は別に払うことになります。
負担するのは誰?
今の支援費では、利用者本人の収入に応じて利用料が設定され本人が負担しますが、本人が負担できない場合は扶養義務者がそ
の収入に応じて負担することになっています。ここでいう扶養義務者の範囲は、20歳以上の障害者の場合、配偶者及び子とな
り、20歳未満の障害者(児)の場合、配
偶者、父母及び子でいずれも障害者と同一の世帯に属し、かつ、生計を同じくすると認められる者とされています。
新しい制度では、この扶養義務者の負担が廃止され利用者本人の負担のみになります。ただし、月額負担上限額は世帯の収入に
応じて決められます。
これについては、「障害者の自立の考え方から、本人だけの収入をみるべきだ」という意見と「いや、他の制度とのつりあいを
とるために世帯単位の収入でみるべきだ」との2つの意見があります。
収入の低い人への配慮は?
費用の負担が難しい人のためにはいろいろな対策がとられることになります。図を見てください。1割の定率負担については所
得階層別にひと月にここまでは負担してくださいという負担上限額が設けられるほか、個別の減免などが用意されています。食
費や光熱水費などの実費負担に対しては、入所施設における補足給付や通所施設における食費負担を軽くする措置がとられます。
厚生労働省では利用料負担について、在宅の人については、一般的な世帯で払える程度の額にする、あるいは、負担することによ
って生活保護の対象にならないようにきめ細かく配慮すると言っています。グループホームや入所施設を利用している人について
は、年金などの収入から利用料の負担を払っても、手元にその他の生活費として、少なくとも2万1千円から2万5千円が残せる
ように配慮するとしています。
これらの低所得者への配慮はきめ細かくなされますが、細かいだけに分かりづらいところがあります。中には3年間の期限を切っ
た経過措置もあって、3年後はどうなるのかも気になります。
利用料負担が不安を招いています。
このように、きめ細かな対策が取られるとはいえ、これからはサービスの利用は無条件にた
だ(無料)というわけにはいきませ
ん。使う量と所得によって応分の負担が求められます。しかし、それによって障害をもつ人が自分の人生を自ら選んで決めてい
くという自立した生活が難しくなることだけは避けなければなりません。何のための改革なのかこれまでよりも良い世の中にす
るよう声をあげていかなければなりません。
今年10月には一足先に公費負担医療(更生医療・育成医療・精神障害者通院公費)の利用者負担の見直しが始まり、来年1月
からは福祉サービスの利用者負担が始まります。具体的にいくらの負担となるのかまだよく分かりません。説明が足りないため
に不安になります。法案の審議が行われている最中とはいえ、この法案が通ればこのようになるという具体的で分かりやすい説
明がもっとあるとよいのですが。
5月12日に行われた「障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動」は当事者の声を届けることができたと思います。衆
議院厚生労働委員会でのやり取りを見るとそのことが分かります。この法案はまだ審議が続くことでしょう。具体的な実施に向
けた政省令も作られています。目が離せません。障害福祉の動きをしっかり見据えながら、私たちの意見を発していきましょう。
(センター長 田北)