平成17年4月1日発行 第30号


ニキ・リンコ氏 藤家寛子氏 ジョイント講演会に参加して


先日、アスペルガー症候群の当事者であるニキ・リンコ氏 藤家寛子氏のジョイント講演会に参加してきまし た。残念な事に藤家寛子氏は体調を崩され欠席されましたが、自閉症を理解する上で得るものの大きい講演会 でありました。今回は、感想も含め皆様に講演の一部をご紹介したいと思います。

 ニキ・リンコ氏は小柄な方で、サングラスに帽子といういでたちで壇上に上がられました。講演の内容は幼 い頃のエピソードから自閉症スペクトラムの特性をわかり易く伝えていただきました。

★間違い探しが得意⇒物事を断片的にみて、背景や文脈がみえない
幼い頃から間違い探しが得意だった。これまで家族、親戚の誰にも負けたことがない。絵を見たときに興味を持 つのは、文脈と関係のない細かい所。例えば、机の上のペンの数、カーテンの膨らみ…など。絵のストーリーに は興味がない。一度に見られる範囲も狭い。

★相手の顔を見て話をするより、相手の顔を見ないほうが話の内容が理解し易い
ことばを聞いて一生懸命ついていくのと、相手の顔を見て表情を理解しようとするのには多大な労力を要する。

★人の中身よりも人の名前の字面や音韻に興味がある
リンコ氏のお知り合いでもある服巻(ハラマキ)先生の名前の字面→平仮名の〔はらまき〕のきの〔二 と カ ーブ〕と、漢字の服巻の巻の〔二 と (己の)カーブ〕が面白い。また、音韻の〔haramaki〕は腹を 巻く〔はらまき〕のイメージが強い。字面や音韻の方が面白くてその人の人間性や個性などに興味が向かない。

★すごく外れた想像をしてしまう 俺ルール⇒想像力の障害
学校で水やりの係りになった。雨の日にも外の花壇に水をやっていたら先生から「雨の日は水をやらないでよい です。」と言われた。次に雨の日に水やりを休んだら、先生から「雨の日にも部屋の花には水をあげます。」と 叱られた。「雨が降ったら水やりを休む」という指示をまる覚えして俺ルールをつくってしまった。

★わかりにくいことば
限定的にしか聞けない、見えない。耳から聞くことばはわかりづらい。単語や単純な文はわかる。「もし、〜た ら、〜れば…」などのことばがわかりにくい。「もし 雨だったら」→〔もし〕は電話の〔モシモシ〕、〔たら〕 は魚の〔タラ〕…どうでしたか?共感できましたか?  「うん うん」と共感できれば定型発達のあなたはリ ンコ氏より自閉症名誉会員の称号をいただけるそうですよ。私はもちろん定型発達の側だと思っていますが、何 回もうなずいてしまい、「深いな〜」と感動するばかりでした。

最後の質問コーナーでは『友達』についてお話してくれました。リンコ氏は興味本位の質問も多かったなか、戸 惑いながらも質問に真直ぐ向き合いながら応えてくれました。

★『友達』について
幼い頃は、母親に褒められるので友達の数を集めていました。今では、どういうものが友達なのか、定型発達の 人もそれぞれで違うでしょう。私は、私のことを友達と呼んでいる人がいるならばその人が友達なのでしょう。友 達の存在や付き合い方については、高いチケットの外国人タレントのコンサートにいった人としばらく会わなくな ったときは、チケットが高いからなかなか会わないのだ…とか、遠方の人は、遠い所にいるから会わないのだ…と とらえています。(ニキさんの言葉を忠実には言い表せてないかもしれません)

最後に司会の先生が、「定型発達の人間は歳をとるごとに横柄になり、管理職は自己中心的、おばさんはオバタリ アン…会うたびにリンコさんの社会性はどんどん成長されているようです。」とおっしゃいました。リンコ氏が生 きていくなかで社会性をどうやって身につけてきたか…リンコ氏自身のとらえ方と違うかもしれませんが、定型発 達の私たちと同じように経験を積むことであったのではないでしょうか。

まだまだお伝えしたいところですが、原稿の制限もありますので、そろそろまとめとさせていただきたいと思いま す。アスペルガーの方々は診断名は同じですが、個性や個人の抱えている問題はそれぞれに違います。今回ご紹介 した内容はニキ・リンコ氏のエピソードであって、他の方々を同じように認識するのは危険です。ニキ・リンコ氏 がお話してくれた様々な失敗や困難は、自閉症スペクトラムの特性がもたらす失敗や困難です。ニキ・リンコ氏の ように外国語に堪能で翻訳もされ、経験を積んで社会性も身につけてこられたような方であっても、また、どんな に高機能であっても、自閉症は自閉症ということです。

自分を認め人を理解することに努力し、感情を丁寧に育んでいるニキ・リンコ氏の人や物事の見方は、時に感情に 振り回されている定型発達の私たちに何かを教えてくれているような気がしました。また、リンコ氏のことばは素 直で、豊富な言語力で思いや考えを伝えてくれました。機会があれば皆さんも是非講演会に行かれてみて下さい。 とりあえずHP

「自閉連邦在地球領事館附属図書館」
 http://homepage3.nifty.com/unifedaut/

((言語聴覚士 栗原)