

平成17年2月1日発行 第29号
30代になってアスペルガー症候群と診断を受けたニキリンコさんと、20代前半でアスペルガー症候群と診断された藤家
寛子さんが、編集者であり花風社社長である浅見淳子さんを交えて語る自閉の世界。「第1部、気まぐれな身体感覚」、「
第2部、幸せな世界観(かもしれない)」、「第3部、自閉の生活法・序論」からなります。
「定型発達」である浅見さんは、序にあたる「この本が生まれるまで」に次のように書いています。出版という仕事を通じ
て多くの自閉スペクトラムの人たちとおつき合いする中で、従来、自閉症とは社会性の障害と言われているがそれは「こっ
ち側の論理」であり、「この人たちにとって自閉とは『身体がつらい』障害なのではないかと言う思いを強くするように」
なりました。そして自閉の人たちの社会参加を阻んでいるのは社会性やコミュニケーションではなく、むしろ身体機能なの
かもしれない、と言うことで二人の対談を企画しました。

対談は、小学生の頃、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を読んで「やっぱり、雨って当たると痛いんだ。だから負けずにがんば
ろうと言っているんだ。」と最近まで思いこんでいた藤家さんの話題から始まります。「雨が当たると痛い」、「扇風機の
風が痛い」、「体温調節ができない」、「スカートって足がなくなる」、「関節の接続は意識しなきゃできない」、「音を
全部平板に拾う」、「身体がなくなる」、その他いろいろな身体感覚の特性が話題に上ります。
自閉の人々と定型発達の人々の間の「身体感覚」の違い、そしてそれぞれが「自分がふつう」と思いこんでいるがためにそ
の違いが分かりにくい。その違いは、「自分の身体がどこからどこまでか分かりにくい。」「五感の感じ方がかなり定型発
達の人と違うため、想像もつかない場面でつらい思いをしていることがある。」のです。「とにかく『自閉の身体障害的側
面』についてはもっと知ってもらいたいです。」と二人は訴えます。
第2部では、自閉の特徴的な世界観も紹介されています。身体感覚の特性からだけでなく、本来持っている特性を教えてく
れます。「俺ルール」「ハイパーりちぎ」「自閉は急に止まれない」「世界はシナリオが決まっている舞台」「見えないも
のはない」等々。さらに、「クラスメートは学校の備品」「自分が学校に歩いていっているのか、世界が回り舞台のように
自分に近づいてきているのか、どっちなのかはっきりと確信が持てなかった。」
これらのことは、「定型発達の人と実感の共有は無理。でも、橋は、定型側と、自閉側からかけられる。ずれが少ない橋に
するために、密に連絡を取り合う。そうしないと橋はかかっても、ずれの大きい渡れない橋になってしまう。」だから、経
験を語って伝えることが大事、と藤家さんは言います。私たち、定型発達に属する人は彼女や彼らの伝えようとしているこ
とをしっかりと受け止めなければならないのです。たとえそれが実感できないことではあっても・・・。
お二人は自閉の世界を言葉でもって私達に教えてくれます。本書は是非皆さんに読んでもらいたい、特に自閉症のお子さん
を持つ親御さん、保育、教育、療育に携わる人たちに読んでもらいたい本です。自閉の人たちを理解する助けになります。こ
うした理解を持つことが、自閉の人たちに対する大切なマナーではないでしょうか。
(田北)
「自閉っ子、こういう風にできてます」
ニキ・リンコ、藤家寛子共著、花風社、2004年、1,600円+税