

平成15年7月1日発行 第20号
このところ、自閉症の本がたくさん出版されています。それも、専門家が書いたのではなく、自閉症
児をもったお母さんや家族、自閉症のご本人が書いた本です。専門的な難しい本や学術本ではありま
せん。著者の体験をもとにした読みやすくわかりやすい本ばかりです。中には、漫画もあります。物
語もあります。ほのぼのとした中にも鋭く本質を衝く部分もあります。それらは、本人や親や兄弟と
いう当事者の手になるだけに、そして日々の生活に根ざした記録であるだけに、読む人の共感を呼び
ます。親たちばかりでなく、ぜひ一般の人たちにも読んでもらいたいです。そしてそれ以上に療育の
専門家と言われる人たちにこそ読んでもらいたいものです。
そんな本のいくつかを紹介します。
(センター長 田北光洋)
(ここで言う自閉症はアスペルガー症候群や高機能自閉症を含む広義の自閉症としました。)

「自閉症の息子とともに@ ありのままの子育て」
明石洋子著、ぶどう社、2002年
現在、神奈川県川崎市の職員として働く明石徹之さんのお母さんが書いた子育ての記録だ。徹之さんと
向き合い、家族と一緒に、地域の中で取り組んできた育児。それは、特別気負ったところもなく、自然
体で地域にとけ込む。しかし、そこには並はずれた叡智と努力のあとが伺える。

自閉症の息子とともにA 自立への子育て」
明石洋子著、ぶどう社、2003年
「ありのままの子育て」の続編。自立へ向けてどのように取り組んできたかが分かる。ことば、こだわ、
トイレ、偏食等々、自立のためにクリアしなければならない課題に一つずつ取り組んだ記録だ。「あり
のままの子育て」と併せて自閉症児を育てるあらゆる人、親だけでなく療育の専門家にも読んでもらい
たい。

「レイルマン」ー自閉症文化への道しるべ
奥平綾子@ダダ母著、OMEMEDO、2002年
インターネットホームページの「ダダ父母通信」が本になった。著者はダダ母の奥平綾子さん。
鉄道大好きなダダ君との生活の実践と工夫の数々が書かれている。「自閉症文化への道しるべ」
と副題にあるとおり、ダダ君の世界をこちら側の世界の規範で見てしまうのでなく、あくまでも
ダダ君の目で見ようとしている。そこには我々とは違う「自閉症文化」というものを認めていこ
うとする姿が伺える。

この本を読みながら、自閉症の本ではないが、最近読んだ「辺境で診る 辺境から見る」
(中村哲著、石風社、2003年)を思い出した。著者の中村哲さんは20年近くアフガニスタンで
医療と干ばつ対策を中心とした活動をしてきた。その活動は、他の援助活動とは違う。「援助と
いう名の干渉」を戒め、次のように書いている。「私たちはつい援助する側の立場からものを見
てしまいがちだが、そこにはそこの人々の喜びと悲しみがあり、よそ者が勝手な尺度で測れぬも
のがあることを知らねばならない。」
異文化を認めること、異文化とつきあうことについては互いに共通するところがある。私たちが
自閉症の方とおつき合いするとき心しなければならないことだろう

「イケイケ パニッカー」ー自閉症の子育てマンガ&エッセイ
高阪正枝著、クリエイツかもがわ、2003年
自閉症の子育てマンガ&エッセイ。パニックいっぱいのパニッカー・薫くんの小学校卒業までの
子育て記録。書いたのはお母さんの高阪正枝さんだ。4コマまんがに込められたユーモアと鋭い
描写。母ならではの観察と洞察が随所にあふれている。

「うちの子 かわいいっ 親ばか日記」ー自閉症児あやの育児まんが
あべ ひろみ著、ぶどう社、2003年
自閉症児あやちゃんの育児まんがだ。お父さんとお母さん、そして弟のたかピーとの生活の様子がユー
モアいっぱいに、でも要所はピシリと締めている。突然降ってわいた自閉症という言葉に揺れる母の心
、日々の生活のエピソードの数々、それらが漫画でうまく表現されている。お母さんが読めば「そうだ
。そうだ。」と、うなずける場面が随所に。現在、続編を執筆中とか。楽しみだ。

「ひろしくんの本(T)(U)」
深見 憲著、中川書店、(T)1999,(U)2001年
大分で自閉症の本と言えばこれだ。お母さんである深見憲さんが書いた博さんの育児と療育の記録で
ある。(U)で克明にまとめられた「博の暮らしの年表」は資料としても貴重である。自閉症児を育
てる人たちには大変参考になる。

「ぼくは うみが みたくなりました」
山下久仁明著、ぶどう社、2002年
本書はまだ読んでないのでぶどう社の案内を引用する。
「自閉症クンと看護学生さんが、海へドライブ。そこからドラマが始まる。シナリオライターで、自閉
症児のパパが書いた小説。やっぱりひと味違う。今話題の本。」

「私はもう逃げない」ー自閉症の弟から教えられたこと
島田律子著、講談社、2001年
NHKから昨年10月に放映されたドラマ「抱きしめたい」の原案となった本。自閉症の弟をもつ姉が
書いた。姉の視点から捉えた弟、そして家族の姿が描かれてある。著者の島田律子さんは国際線スチュ
ワーデスからタレントへ、そしてエッセイスト、パーソナリティとして活躍中。華やかな世界に身を置
きながら自閉症の弟と家族への思いは深く、それがひしひしと伝わってくる。

「変光星」ーある自閉症者の少女期の回想
森口奈緒美著、飛鳥新社、1996年、現在はデジタル・パブリッシング・プレス「万能書店」
http://www.d-pub.co.jp/ から入手可能。
副題に「ある自閉症者の少女期の回想」とあるように著者の森口奈緒美さんは、高機能自閉症である。
小さい頃から自分は他の人とは違うことに気づきながらもそれが何でそうなのかが分からず、悩み、苦し
んできた。これは幼年期から中学を終えるまでの苦闘の記録だ。まわりの世界とのギャップ、その居心
地は決して良くない。友達との行き違い、無理解といじめの数々。これらの記録を通して私たちは自閉
症者の世界をかいま見ることが出来る。

「平行線」ーある自閉症者の青年期の回想
森口奈緒美著、ブレーン出版、2002年
「変光星」の続編。森口奈緒美さんの青年期のこころの記録である。高校入学以後の回想を記している。
人は誰でも自閉症的傾向をもつと言われる。森口さんの本を読むと、それは言えると思う。しかし彼女
の苦悩は想像を絶する。読む者の心に重くのしかかる。読み続けるのが苦しくなる。自閉症者の世界と
まわりの世界は、どこまで行っても交わることのない平行線なのだろうか。自閉症者の苦しみに触れ、
心は重く、切なくなる。しかし、彼女の最後の記載は私たちには救いだ。
「出版後、私は念願の、最新の正式な診断を受けることが出来た。
戦いを止めたら、途端に、世界が明るくなった。
私はもう、頑張らなくてもいい。強くならなくてもいい。完全でなくてもいい。
今では、自分の弱さを許している。(略)自閉症を、許している。(略)自分を許したその日から、
他人の過ちも許せるようになれたような気がした。(略)他人に寛大になったことで、人付き合いも
出来そうな気がした。それは、それまでのどんな努力よりも、訓練よりも、価値のあるものだった。」

「ぼくのアスペルガー症候群」ーもっと知ってよ僕らのことを
ケネス・ホール著、東京書籍、2001年
北アイルランドに住む10歳のケネス君が自身の体験と思いを本にした。第1章「ぼくのこと」、
第2章「ぼくがちがっているところ」、第3章「ぼくの長所」、第4章「ぼくが信じていること」
と読み進むと、森口奈緒美さんの一つひとつの言葉とオーバーラップする。自閉症の世界にふれる
ことができる。漢字にはかながふってあり小学生にも読める。

「DNAパラダイス」ー27人のアウトサイダーアーティストたち
はた よしこ編著、日本知的障害者福祉協会、2003年
27人の知的障害者の手になる作品を写真で紹介する。知的障害者福祉協会機関誌『サポート』の表
紙を飾った作品だ。必ずしも自閉症者の作品ばかりとは言えない。だが一人一人のもつ「こだわり」
がほとばしり出て、彼や彼女の作品となる。自閉症者の自己表現に通じるところがある。そこでこれ
を自閉症の本に加えた。

「光とともに@〜C」
戸部けいこ著、秋田書店、2001年〜
自閉症の当事者が書いたのではないが、自閉症の光ちゃんとその家族が主人公のコミック。ベスト
セラーだ。この本のおかげで自閉症の理解が進んだ。